第547話 思惑

「一体どういうことなんだっ!?」

 会議室では異世界人達がリリス達を攻撃している光景を見てざわめいている。

 リリス達に今回の戦闘を任せることで、こちらからは攻撃をしないことを約束していたので皆慌てていた。

 今は中継を切っているので全国民は知らないことだが、それでも約束をしたことは全国が見ている場でのことだ。

 国王達がしっかり了承した手前、こちらから約束を破ることは絶対にあってはならない。

「一体どこの国の者だ!」

「誰か奴らのことを知らないのかっ!?」

 そしてすぐに犯人探しが始まる。

 約束を破ってしまったのは一つの国のせいだと。

 そいつらをつるし上げることでなんとか自分達の信用を失わないようにするのに必死だった。

 だが素直に名乗りをあげるほどバカな奴はいない。

 今回の場合、約束を反故にすればリリス達は悲劇の主人公となってしまう。

 それにより国民達がよりリリス達の元へと集まり、反逆されかねない。

 だからこそ誰しも犯人探しに必死なのだ。

「待て」

 しかしそんな中、一人の国王――ザグの元上司――が冷静に声をあげる。

「どの道ここでいくら声を出そうが犯人が名乗り出てくるはずがない。だからここは我々で対処しようじゃないか。犯人探しは奴らを捕まえてからの方がしやすい」

 国王はここでただ言葉をぶつけ合うだけではなく、自らで動くことを提案する。

「勿論私の部隊はすぐに向かう準備は出来ている」

 先ほどまで敵が攻めてくる危険があったので、どの国もいつでも部隊を動かせるようになっている。

 だからこそすぐに騒ぎを鎮めることで、事態の鎮圧化をはかろうというわけだ。

「だったら俺も行かせてもらう。元々は俺の国の問題だからな」

 するとリリスの後任である国王も名乗りを上げる。

 それによって先ほどまで言い争いをしていた国王達は皆口をつぐんで黙る。

「――分かった」

 しばらくその提案についての利点について考えた国王達はそれぞれ判断したようだ。

「それじゃあすぐに向かうぞ!」

 そうして国王達はそれぞれの部隊を引き連れて異世界を出た。


(――ふっ、よもやここまで上手くことが運ぶとはな)


 しかしそんな中、一人の男が薄ら笑みを浮かべているのだった。

(これでこの国の戦力は集まる。後は向こうがうまくいけば……)

 男は国王達と共に部隊を引き連れてリリス達の元へと向かっている。

(リリスめ……見ていろよ。お前の野望は俺が必ず壊してやるっ)

 男はそんな思惑を掲げながら先へ進むのだった。

 その思惑に気づく者は誰もいない。

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