第546話 騒然

「お願い、話を聞いてっ!」

 指揮官からの攻撃をひたすらに回避し続ける奈々枝は、それでも指揮官に向かって叫ぶ。

「うるさいっ!貴様等人間などの話など聞いてたまるかっ!」

「くっ……!」

 だが指揮官は奈々枝の話など全く聞く気がなく、ただ殺すために攻撃をし続ける。

 流石に異世界人相手に一対一で勝てるはずもなく、奈々枝は仕方なく康生達と合流しようとする。

「どうしてあなた達は私達を攻撃するのっ!私達は異世界人と敵対する気はない!そう会議でも話したはずでしょっ!」

 だが諦めきれずに奈々枝は最後に訴えかけるが、もう何も話すつもりはないのか無言で攻撃を繰り出すだけだった。

「奈々枝っ!諦めろ!じゃないと死んでしまうぞっ!」

 その様子を遠くから見ていた康生は奈々枝に戻るように叫ぶ。

 流石にこれ以上は危ないと判断したのだろう。

 奈々枝の身を案じて戻るように言った。

「くそっ……!」

 最後の最後まで諦めるつもりはなかった奈々枝だが、こうも相手に聞く気がなければ何も出来ない。

 だからここは素直に康生達と合流するしかなかった。

「逃がさんぞ人間っ!」

 しかし指揮官は奈々枝を逃がさないようにさらに攻撃を仕掛けてくる。

 だが奈々枝は魔道具を発動させて間一髪のところで脱出する。

「くっ!やはり貴様等は危険な存在だっ!皆の者!全員残らず殺してしまえっ!!」

 指揮官はそんな奈々枝を見みると、さらに憤った様子で仲間に叫ぶ。

 異世界人達はそんな指揮官の声を聞きさらに士気があがる。

 皆、確実に康生達を殺すために血眼になって猛威をふるってくる。

「くっ!なんなんだよっ!俺達が一体お前等に何をしたっていうんだよっ!」

「うるさいっ!お前は全員死ねっ!」

 康生が悪態をもらすが、もはや異世界人達に言葉は通じなかった。

 とにかく康生達を殺すことしか考えていない。

 そんな相手に殺さずに行動不能にさせることは中々に厳しいものだった。

「とにかく皆集中してっ!連携がとれれば必ず勝てる相手よ!だから頑張ってっ!」

 奈々枝も康生達の元に戻って現場の指揮をとりはじめる。

 そうして康生達と異世界人達との戦いが始まる。




「何っ?リリスの奴らが攻撃されているだと?」

 場所が変わってここは異世界。

 先ほどまでリリスをめぐって会議が開かれていた場所だ。

 今の今までリリス達の先頭を見守っていた各国の国王達は今後の対策を含めて話し合っている最中だった。

 だがそんな時、ふと映像に出てきた異世界人が攻撃を仕掛けているのを見て会議は騒然としていたのだった。

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