第544話 中央
「急ぎますよ英雄様っ」
「あぁ、分かってるよっ」
拠点から見て左側へと移動した康生と奈々枝達はとにかく素早く移動をしていた。
未だに拠点への攻撃が止まらないので康生達はとにかく急いで敵を見つけて攻撃をやめさせなければならない。
しかしそれでも上代琉生の隊員達が周囲を確認しながらでの移動になるので魔道具を使った高速移動は出来ない。
「でもくれぐれも無理は禁物ですよ。特に『解放』の力は絶対に使っちゃだめです」
「全く……急げだの無理をするなだの忙しいな……」
奈々枝に口うるさく言われ康生はため息をこぼす。
だけど奈々枝の言うことに対しては特に反抗する様子もなく素直に従っていた。
流石にあれだけの力を使った後では満足に『解放』の力は使えずにいる。
「それで、敵を見つけたらどうするつもりなんだ?」
奈々枝達と共に移動しながら康生は敵への対処を尋ねる。
「そうですね……。まず敵の真意を確かめる。敵対の道しかない場合はすぐに制圧するよ」
「了解」
敵の思惑を探るのは奈々枝や上代琉生に任せて康生はひとまず敵を倒す場合は頑張ろうと決める。
敵の正体も分かってない現状、とにかく慎重に動かざるをおえなかった。
だがその時、康生達の動きに敵が気づいたのか隊員の一人から止まるように指示を受けた。
「どうしましたっ?」
奈々枝はすぐに隊員からの報告を聞く。
康生は兵士達に辺りを警戒するように指示をして、康生も周囲を警戒する。
「どうやら敵の姿が見えたようです。ですがまだこちらは気づかれてないみたい」
「そうか。なら奇襲をするならもってこいだな」
「そうね。だけど敵の真意を確かめるために正面から堂々と攻めるわ。もしかすると何かの間違いが起こってるかもしれないし」
「あぁ。その時は任せたぞ」
「うん。任せて」
奈々枝と軽く打ち合わせした康生達はすぐに敵の元へと移動する。
敵はやはり異世界人のようで、様々な種族がいるようだった。
だが数はたったの数十人。
奈々枝の予想ではあちこちにグループがあるという話だが、いくらかグループに別れているおかげで攻略がしやすい。
中央に指揮官らしき人影があるのでその人物への接近を奈々枝に任せて、康生達は敵と正面から迎え撃つ。
「本当に戦えるんですか?」
突撃する寸前、奈々枝が康生の体を心配する。
「大丈夫。もともと魔法が使えなくとも俺は戦える。魔道具もあるしな」
「ならいいんですけど、くれぐれも無理は禁物ですよ」
「そっちだって気をつけろよ。敵の中央に行くんだ。危険だと感じればすぐに戻ってこいよ」
「分かってますよ」
連戦の中、康生達は疲れを感じさせない表情で新たな敵へと向かって足を進めるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます