第543話 正体

「今の爆発は一体どういうことだっ!?」

 上代琉生が丁度拠点にたどり着いた頃。

 エルは敵兵達の元へと移動していた。

 先ほどの爆発音はやはり敵兵の耳にも届いていたようで、エルを見つけるや否や兵士達は周りを囲うように詰め寄る。

 そして国王は怒りを露わにして怒鳴りつけていた。

「現在詳細を解明中です。新たな敵が攻撃を仕掛けているので皆様も警戒して下さい」

 しかし兵士達に囲まれながらもエルは冷静に皆を説き伏せようとする。

 だがそんなものは信じられないと兵士達は怒りを表にだし、今にも拘束してきそうな勢いだった。

「そんなことが信じられるかっ!やはり貴様等は我々をはめようとっ……」

「違う!」


 国王の言葉にかぶせるようにエルは叫ぶ。

 当然端から信用されるとは思ってなかった。

 だからこそエルはこちらのペースに引き込みながらも証拠を開示する。

「これが現在の戦場の様子です。あなた達を騙すためだけにこんなにも味方を危険に晒しますか?」

 エルが掲げたスマホからは現在の拠点の映像が流れていた。

 そこには火の玉が降り注ぎ、兵士達が必死に防いでいる様子が映し出されていた。

 しかもその中には康生やリナさんの姿もある。

「うっ……」

 流石にそんなものを見せられてしまえば頭から否定することは出来なくなる。

「これで信じてもらえますか?」

 エルの言葉に誰しもが言葉を噤む。

 まだ完全には信用仕切れてない手前、どう反応すればいいか分からないのだ。

 先ほどまで敵だったことを考えれば当然のことだ。

「安心して下さい。皆様に被害が及ばないように我々は尽力します。そのため敵の情報はこれから全て開示します。なのでこれからの動きはそれを聞いてからでもいいんじゃないですか?」

 だからこそエルは完全に信じさせて言うことを聞かせるのではなく、情報を開示した上で相手に選択権を与える。

 それによって敵も真っ向から反抗する要素がなくなるというわけだ。

「――何度も言うが我々は貴様等化け物共を信用してはいない」

 そんな中国王がゆっくりと口を開く。

「だが、新たな敵が出てきたというのは認めよう。貴様等の情報も当然全てもらい受ける。だから一時的とはいえ貴様等とは協力関係を結ばせてもらう」

 流石にあれだけの攻撃を仕掛けてくる敵がいると知ったので、迂闊にエル達を無碍にはできないようだった。

「はい。それで構いません。どうぞよろしくお願いしますね」

 そうして無事、敵兵から攻撃を仕掛けられることを防いだエルだった。

 そして丁度その頃、康生達が敵の正体を見極めるため、拠点から出発していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る