第542話 移動
火の玉が降り注ぐ中、いつの間にか康生達の背後に上代琉生が一人立っていた。
「一人で来たのか?エルはっ?」
だからか康生はエルと一緒にいたはずの上代琉生に尋ねる。
「エルは今敵の兵士達のところに向かわせています。隊員を多めに護衛に回させたので安心して下さい」
「そうか……」
エルが無事と聞き康生はひとまず安心する。
そして上代琉生がここに来たということは国王との話し合いが無事に終わったということだろう。
だが突然の爆発音に慌てて来たという感じだった。
「それでまだ早いとはどういうことだ?」
エルの無事が確認できたことでリナさんはすぐに言葉の真意を尋ねる。
「恐らく敵は待ちかまえているはずです。無闇にいけば最悪の場合死んでしまいます」
「それは分かってるけど。でも早く動かないとさらに状況が悪くなっちゃう」
だが上代琉生に対して奈々枝は意見をぶつける。
上代琉生も時間をかけると状況が悪くなることは分かっているはずだ。
それでもまだ早いと言ったには何か理由があるはずだと奈々枝は上代琉生をじっと見つめる。
「ここに来る間周囲を少し見てきたが、どうやら敵は前方にしかいないようだ。つまり敵もそれだけ急いで攻撃を仕掛けてきたということ」
「なるほど……じゃあ左右からいけば」
「あぁ、少なくとも危険は軽減する」
上代琉生の話では敵は前方に固まっており、全方位から迫ってくるように見える火の玉は全て敵が操っているもののようだ。
だから左右には敵の姿はなく、容易に進行することが出来る。
「かと言って敵も左右に展開しながら動いているはずだ。危険がないとは言えないが前方に行くよりかはましなはずです」
「なるほど。それじゃあすぐに向かうぞ」
話を聞いたリナさんは早速左右に別れるために人を集め始める。
「それじゃあ俺とリナさんは左翼へ。英雄様と奈々枝は右翼をお願いします」
上代琉生の指示の元、簡易的な部隊が編成される。
この拠点にはリリスと時雨さんを残して防衛を任せ、こちらからの反撃の動きも見せるようにお願いした。
それによって的も油断するだろうとのことだ。
とにかく速やかに動かなければいけないため、康生達はすぐに拠点を経つ。
「英雄様。くれぐれも無理はしないで下さいね」
「……他の人達にも同じように言われたよ。大丈夫、もうあんな失敗はしない」
最後に上代琉生からも注意を受けた康生はため息とともに答える。
「皆でこの戦いに勝つ。それだけだ」
「なら大丈夫です」
康生の答えに上代琉生は満足したように頷く。
「それじゃあ健闘を祈ってます」
「そっちこそな」
そうして康生の部隊と上代琉生の部隊はそれぞれの場所へと向かって移動を始めたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます