第541話 隊長

「奈々枝っ、リナさんっ大丈夫ですかっ!?」

 火の玉か降り注ぐ中、異世界人達がくい止めている横を通り過ぎて奈々枝達の元に康生は向かう。

「英雄様っ、大丈夫なんですかっ!?」

「うんっ、こんな大事な時に休んでいられないからね。俺も手伝うよ」

 康生の姿を見つけて奈々枝は心配して声をかけるが、康生は心配無用と言わんばかりに話す。

「ふんっ、くれぐれも足を引っ張るなよ」

「分かってますよ」

 だけどリナさんからは真逆の言葉をもらう。

「それで、敵はどこにいるんですか?」

「まだ見つかってない。今はこの攻撃を防ぐだけで精一杯だっ」

 四方八方から飛んでくる火の玉相手にどうやら苦戦しているようだった。


 リリスが連れてきてくれた異世界人達のおかげもあって、なんとか現状防ぐことは出来ているがそれでも中々身動きをとれることはなかった。

「俺が行ってきましょうか?風の力を使えばなんとか抜けることが出来るはずです」

 身動きがとれないと分かり、康生は単独で突破しようと試みる。

 だがすぐに奈々枝に止められた。

「危険だよ。敵がまだどんな規模でいるか分からない。それこそこの先を抜けられるのを見越して罠を仕掛けている可能性が大きい」

「くそっ……」

 確かに敵の規模が分かってない限り、迂闊に飛び込むのは危険だ。

 さらに空中も攻撃の段幕が激しいため満足に抜けることも出来ない。

「かと言ってこのままここで待つだけじゃだめだ」

「あぁ、それは分かっている」

 康生の声にリナさんが反応する。

 防戦一方になってしまえば必ず敵が次の一手を打ってくる。

 康生達はそれをされる前に動かなければならなかった。

「とにかく少し危険ですが、私達の部隊を引き連れて偵察に行ってきます。私達ならまだ罠があってもなんとか逃げることが出来るはずです」

「だったら俺も……」

 奈々枝達が突撃しようとするのを聞き、康生も一緒に同行しようとする。

「いえ、英雄様はここで待っていて下さい。体もまだ完全じゃないですからね。それにもしもの時は英雄様に頑張ってもらうしかないですから」

「……分かったよ」

 奈々枝に言われた康生は我慢するように答える。

 そう言って奈々枝は部下達を集める。

「奈々枝、くれぐれも死ぬなよ」

「分かってますよ」

 そうして奈々枝はまず爆発音がした場所へと向かおうとする。

 だが、

「待て奈々枝っ。動くはまだ早い」

 しかしそんな奈々枝を呼び止める声が。

「隊長っ……」

 奈々枝が振り返った先には上代琉生か立っていた。

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