第539話 後方
「何があったっ!?」
爆発音が響きわたりあちこちに小さな岩や砂埃が飛び散る中、真っ先にリリスが叫ぶ。
爆心地の距離が近いのか、爆風が混じって康生達は飛ばされないように身を低くする。
「敵ですかっ!?」
まだ満足に体が動かせない康生は近くにいた時雨さんに庇ってもらいながらすぐに現状を把握しようとする。
「いやっ、敵はすでに上代琉生達の元にいるはずだ。こんなところにいるはずがない」
「じゃあ誰が……」
上代琉生の指示で捕まえていた敵兵は全て国王の元へと帰した。
だからこそ敵兵が攻撃を仕掛けてはこれないはずだ。
じゃあこの爆発音は一体誰が?
混乱する状況の中、誰一人として現状を把握出来ないままただ爆風が通り過ぎるのを待つことしか出来なかった。
「皆さん戦闘準備です!厳重に警戒して下さい!時雨さんとリリス様は英雄様とザグお兄ちゃんを守ってて下さいね!」
「奈々枝っ!」
爆風の中、真っ先に指示を出した奈々枝はすぐに状況把握のために動き始める。
時雨さんは一人では危険だと思いすぐに呼び止めたが、奈々枝は立ち止まることはなかった。
仕方なく時雨さんとリリスは康生を背負ってザグの元まで移動する。
周囲には数人の部隊も合流し、とにかく康生達を厳重に守るようだった。
それ以外の者は全て奈々枝の指示の元、拠点を囲うように防衛体制をとる。
元々上代琉生が防衛をする際の隊列を考えていたおかげで、皆スムーズに動くことが出来た。
しかし現状敵が何かは分かっていない。
そのことが兵士達の不安を膨れ上げさせる。
「まさかとは思うが……」
とそんな中リリスが周囲を確認しながら声を漏らす。
「何か知ってるんですかっ!?」
そんな小さな声を聞き漏らさなかった康生はすぐにリリスに問いつめる。
「落ち着け。我が考えたことはあくまでの想像の範疇にすぎない」
「それでもいいから話してくれないか?」
現状何も情報がない中、時雨さんも不安に思っているのか康生と同じようにリリスに尋ねる。
「あぁ、分かっておる。恐らくこの攻撃は……」
とそこまでリリスが言った瞬間、爆発音がした方向から炎の玉が降り注がれる。
「異世界人の皆さんはすぐに対処して下さい!」
奈々枝は咄嗟に指示を出して火の玉を防ごうとする。
「あれだけの魔法……もしかして……」
康生はそれを後方で眺めながら、リリスの考えていたことに気づく。
「もしかすると今仕掛けている敵は異世界人かもしれん……」
降り注ぐ火の玉を見ながら、リリスは苦情の表情で告げるのだった。
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