第538話 拠点

「エル達は大丈夫なのかな……」

「お主は自分の体のことを心配しておれ」

 康生がエル達のことを心配しているところにリリスがやってきた。

 拠点に戻ってからは奈々枝と共に兵士達に指示を出していたが、ようやく終わったのか休憩をするついでに康生の元へ寄ってきたようだ。

「俺はひとまず大丈夫ですよ。それより何から何までありがとうございました」

 康生は改めてリリスにお礼を述べる。

 大事な会議があったのに、こうして会議を切り上げ助けてもらった。

 さらには異世界人も連れて来てくれたおかげで現状、エルがいない中でなんとか治療が出来ている状況だ。

 まさにリリスがいなければ康生もあのまま暴走していたし、万が一暴走が止まったとしても康生もザグも何も出来ないまま死んでしまっていたかもしれない。

 だからこその康生はリリスに感謝していた。

「何気にするな。元々お主達のおかげでこうして父の望みを叶えるための準備が進んだわけじゃしの。それに……」

 とそこでリリスは言葉を区切って康生を睨む。「そういうのはなしじゃ。さっきも言われたじゃろ?一人で何もかもやろうとするな。私達は皆で助け合っていくんじゃ。だからいちいち礼などいらぬ」

「うっ、そうですね……」

 康生が目覚めた時にリナさんから言われたことを思い出す。

 一人で全て抱え込んだ結果、魔力暴走を起こして仲間に多大な迷惑をかけてしまったので当然康生は深く反省していた。

「確かに今までは全部一人でやろうとしてました……。でも、少なくとも俺は皆の為にこれからも頑張り続けますよ」

 反省はしつつも、だが康生は皆の役に立つためにこれからも頑張り続けることを宣言する。

「分かっておる。じゃがお主一人じゃない。仲間と共に頑張ればいいことじゃ」

「そう、ですね……」

 康生は今までの自身の行動を見直して反省する。

「そういえば奈々枝からこんなものを預かっておるぞ」

 するとそんな康生を見て、リリスはとある物を手渡してくる。

「これはっ……!」

 リリスから手渡された物を見て康生は声をあげた。

「それは確かお主の大事なものなんじゃろ?」

「は、はいっ……」

 康生の手の中には、両親の形見である懐中時計があった。

 あの時、指揮官が投げ捨てたあの懐中時計だった。

 しかも驚いたことにひび割れていた画面が綺麗になおっていた。

 きっと奈々枝が気を利かせてくれたんだろう。

「ありがとう奈々枝……」

 拠点の中で未だ頑張って仕事をしている奈々枝を見ながら康生はそっと呟いたのだった。

「さて、それじゃあ我もそろそろ戻ろうかの……」

 そう言ってリリスは再び仕事に戻ろうと立ち上がる。

 だがその直後、拠点のすぐ近くで大きな爆発音が響きわたったのだった。

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