第528話 気絶
だんだんと光が収束していく。
突然の光で目が慣れない中、ゆっくりと開けていく景色に指揮官はゆっくりと目を開く。
「い、一体何が……っ」
うっすらと見える景色からはリナさんの姿はまだ見えていない。
恐らくリナさんは光の中心にいるのだろう。
現状、何が起こったのか分からない指揮官はただじっと状況を見極めるしかない。
わずかに残った雷の物体を移動させ、自身を守るように展開させる。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
光が完全に収まると同時にリナさんに荒い息が聞こえてきた。
「なっ!?もしや今の攻撃を耐えたというのかっ!?」
どういう原理か分からないが、あれほどの攻撃を全て防ぎきったということだ。
決死の攻撃だったからこそ、指揮官は驚きを隠せずにいた。
だがリナさんは少なからずダメージを負っており、顔の表面には焼け焦げたような黒い痣が浮かび上がっていた。
「くっ!こんなところでっ!」
もう虫の息だと判断した指揮官はさらに雷の物体を操りリナさんへ攻撃を仕掛ける。
確実に殺せるよう、全方位に小さく張り巡らせる。
「こ、今度こそっ……!」
確実に殺すために息もつかずに指揮官は攻撃を仕掛ける。
だが、
「そうはさせないっ!」
リナさんのおかげで今まで指揮官に忘れられていた時雨さんが背後から一気に近づく。
「くっ!」
リナさんと康生を攻撃することしか頭になかった指揮官は、突然現れた時雨さんに反応が遅れる。
しかし自分の周囲に残しておいた雷の物体をすぐに展開させて攻撃を防ごうとする。
「人間の貴様にこれは防げまいっ!」
時雨さんに攻撃を仕掛けつつも、同時にリナさんに向かわせていた触手も動かす。
二人同時にしとめようと指揮官は神経を張り巡らせた。
「確かに私一人じゃこれはどうにもできないな……」
「当たり前だっ!」
雷の物体に逃げ道を防がれた時雨さんは苦しい表情を浮かべる。
(これでこやつらをっ……!)
寸前のところで咄嗟に驚異的な反応を見せた指揮官は頭をフル回転させて対応していた。
だからその時、指揮官は二人にしか意識を向けていなかった。
否、その場に潜んでいた人物に気がついてなかったのだ。
「今だっ、リリスっ!」
攻撃が直撃する瞬間、時雨さんが大声で叫ぶ。
「なにっ?」
突然呼ばれた第三者の名前に指揮官は警戒を示そうとする。
だが極限の集中状態のため、すぐに反応が出来ずにいた。
「感謝するぞっ!」
だから指揮官はリリスの接近に対応出来ずにいた。
奈々枝に担がれたリリスは一瞬のうちに時雨さんの元へ向かっていた雷の物体を消滅させる。
かと思えば次の瞬間、リナさんの方にあった雷の物体も消滅させる。
「なっ……!?」
あまりにも突然の出来事に指揮官は動きを止めた。
そしてその隙を狙って時雨さんが指揮官を気絶させるのだった。
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