第527話 収束

「いくぞっ!」

 無数に迫ってくる触手に向かってリナさんは突貫する。

 触手は数はおよそ百にも届くほどの数だ。

 しかし全てはリナさんに向かってではなく康生へと向かって伸びている。

 なのでリナさんはわざと全ての触手に攻撃をしないといけない。

 それがどれだけのことかは形容し難いものだが、リナさんは苦しい表情一つせずに槍を振り回す。

「さぁっ!どんどんこいっ!」

 唯一の利点は敵が雷で出来ていることだ。

 雷魔法が得意なリナさんは、雷で出来ている触手を操り集めることが出来る。

 だがこれほどの雷の量を全て操れるかはリナさんの技量にかかっているが、とにかく何も考えずにひたすら触手を破壊していった。

「くっ!邪魔をするなっ!」

 リナさんの健闘を見て、指揮官はさらに焦るように雷の触手を増殖させる。

 ここで退けば康生から魔力を吸収出来なくなると判断したのか、この攻撃に全てを託しているようだった。

 それ故に敵の猛攻撃は厳しいものへとなっていく。

「む、無駄だっ!!」

 だがいくら触手が増えようがリナさんはそれら全てに向かって槍を振るう。

 時には攻撃を食らってでも防ぐ。

 装備のおかげか多少ダメージが軽減されるも、全身が痺れるような痛みが伴う。

 それでも必死に体を動かしいくつもの触手を破壊していく。

「くっ!無駄な抵抗をっ!」

 指揮官もとうとう本気になったのか、自身を覆っている雷の物体すらも使って一斉攻撃を仕掛けてくる。

「貴様等化け物どもに負けるわけにはいかないのだっ!!」

 激怒し、目的を忘れてでもしまったのか指揮官はリナさんに向けて一斉に触手を伸ばす。

「貴様らさえいなければ今頃我々人類はっ……!」

 ただ異世界人に対する恨みを露わにして攻撃を繰り出す。

「く、ぐっ!」

 全方位囲むように一斉にリナさんへと伸びた触手は逃げ道を防ぐように隙間なく襲いかかる。

 全てを一度に捌くことは不可能に近い。

 一発で破壊されるからか触手の大きさは小さくなっていて、その分数がより多くなっている。

「……こうなれば一か八かっ!」

 無数の触手を前にリナさんは槍を構えて魔力を溜める。

 どうやら一撃で全て決めようとしているようだった。

「――いくぞっ!」

 一息つくとリナさんは槍を振り回す。

 一直線に向かってくる触手達に対して視線を向けずになにやら集中するように目を閉じる。

 そして、

「はっ!」

 巨大な音と共にリナさん周辺に眩い光が覆う。

「ぐっ……!」

 指揮官は思わず目を光を隠す。

 まるで全て包み込むほどの光は、しかし一瞬のうちに収束していくのだった。

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