第526話 覚悟

「どうしたっ!早く助けないと仲間が死んでしまうぞっ!仲間の手でなっ!」

 焦る二人を見て指揮官は猛攻撃を加える。

 防ぐしか出来ない二人はただ苦渋の思いで攻撃を回避し続けることしか出来ない。

 そんな中、ザグはもう瀕死の状態だった。

 半ば強引に戦っているのでいつ倒れてもおかしくない状況だ。

 だが二人は雷の物体から離れようとしない。

 焦燥感に駆られながらもじっくりと期を待つように二人はただ攻撃を回避し続ける。

「どうしたっ!お前達は仲間を見捨てるのかっ!お前らは誰も死なせないんじゃなかったのかっ!敵を助けておきながら味方を見殺しにするのかっ!?」

 しかしどうしてか指揮官が煽るように言葉をぶつける。

「貴様には関係のないことだ。どうした?貴様こそ焦っているようだな?」

「焦っているだと?それはそちらではないのかな?」

 お互い慎重に言葉を交わらる。

「くそっ、埒が明かないっ!こうなればっ……!」

 とうとう我慢出来なくなったのか、指揮官は雷の物体を操って康生へと攻撃を食らえようとする。

 これ以上魔力を使ってしまえば雷の物体の力が弱まってしまうと判断したのだろう。

「させんっ」

 しかしリナさんはすぐにそれを防ぐ。

「ちっ!邪魔をするなっ!」

「それはこちらの台詞だっ!ザグの邪魔は絶対にさせないっ!」

「くっ……!」

 指揮官もとうとう躍起になって、魔力を奪うために康生へと向かって全力攻撃を仕掛けようとする。

「時雨っ!頼むぞっ!」

「あぁっ!」

 リナさんはなにやら時雨さんに声をかけた後に、猛攻撃へ向かっていく。

 どうやら全てを防ぎきるようだった。

 避けることは簡単だが、全ての攻撃を防ぎきることは流石に難しいように感じられる。

 全方位からの雷撃の触手が伸び一斉に康生へと、否その前にいるリナさんへと向かっていく。

 魔法を使ってもすぐに吸収され、攻撃力が増していくだけだ。

 しかしこれだけの攻撃を魔力なしで防ぎきるのは無謀だ。

 だが唯一の手段として、リナさんの特製の武器がある。

 常に雷を纏わせているその槍は康生の改造のおかげで、周囲の雷を吸収することが出来る。

 リナさんはそれを使って防ぎきるつもりだった。

「ここが正念場か……」

 リナさんは息を整えて正面に迫ってくる無数の触手を見据える。

 全て槍で攻撃し雷を吸収しなければならない。

 その体で受け止めてでも止めなければ康生に攻撃が、何よりもザグが本当に死んでしまいかねない。

「いくぞっ!」

 覚悟を決めたリナさんは槍を構えて真っ直ぐ飛び込んでいったのだった。

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