第524話 心配
(くっ……このままだとじり貧になってしまう。時間がかかれば異世界人の奴らが何かしら策を投じてくるはず……。なんとしても早く奴から魔力を吸い尽くしてこいつを完成させねば……)
雷の物体の中で指揮官は思考を巡らせる。
お互い長時間続くのはよくない状況だった。
(しかしこいつら相手に本気を出せば魔力を無駄に使ってさらに時間がかかってしまうし……くそっ……)
苛立ちを隠せずに指揮官は舌打ちをもらす。
(だが異世界人一匹だけであのガキの相手がそう長く続くわけがない。きっとすぐにでも殺されるはずだ。しかしこいつらも何か作戦があるはず。それをされる前になんとか状況打破しなければならない……)
焦燥感に駆られながらも、指揮官は思考を巡らせる。
(ここは増援を来させるか。数さえあればこいつらの動きを封じることが出来るはず……)
だが増援を呼んでしまえば雷の物体は無慈悲に攻撃を開始してしまう。
指揮官はそれを知ってる上でなお、当然のように増援を呼ぶために無線をつなげる。
「おいっ、すぐに兵をよこせっ!」
『ザ…ザ……、ザザ……』
「お、おいっ、どうしたっ!聞こえないのかっ!?」
だが無線からは砂嵐の音が聞こえるだけだった。
いくら声をかけても無線はつながらない。
雷の物体の中にいては、味方の状況も満足に分からないので向こうの状況が一切分からずにいた。
「くそっ、何があったんだっ!」
確認しようにも、自分が外に出てしまえば自分まで狙われてしまう。
中にいるからこそ、安全を保ちながら最低限操れている。
この場を離れることも出来ないため、結局どうしようもできない。
「反応してくれっ!」
再度無線で呼びかけながら指揮官は焦りの表情を浮かべるのだった。
「慌てるな!戦力ではこっちが勝ってる!落ち着いて進めっ!」
指揮官が苦しい表情を浮かべている時、ちょうど上代琉生達が仲間を引き連れて進軍していた。
「く、くそっ!どうして異世界人どもがここにいるっ!あの兵器は何をしてるんだっ!」
突然侵攻してきて上代琉生達の軍団を身ながら、敵兵は慌てたように戦場を駆け回っている。
見た感じ後は雷の物体に全て任せていたようで、敵兵は全員もれなく油断していた。
そんな中、上代琉生が冷静に進軍しているのであっという間に敵の軍勢は崩れていく。
「くそっ!すぐに立て直せ!化け物風情に負けてたまるかっ!」
突然のことに戸惑いながらも敵兵は必死に抵抗しようとする。
しかし半ば自暴自棄になっている以上、上代琉生の相手ではなかった。
敵の軍勢は見る見るうちに倒されていく。
「ここなんとかなりそうだな。問題は向こうだが……。頼んだぞ奈々枝」
敵兵を殲滅していく中で上代琉生はふと向こうの戦場のことを心配するのだった。
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