第522話 策

「本当にザグ一人に任せて大丈夫なのか?」

「心配するな。それにいずれ上代琉生達がなんとかしてくれる。私達は康生のためにも目の前の奴を倒すぞ」

 背後で康生と戦っているザグのことを時雨さんは心配しているようだった。

 だけどリナさんはすぐに目の前の敵に集中するように言う。

「くそっ、邪魔しやがって。順調にいけばあと少しでこいつが完成したもののっ……」

 康生と距離が開いたことにより指揮官が苛立ちの声をもらす。

 先ほどから雷の物体を操り二人を攻撃しているが、簡単に避けられてしまいさらに苛立ちを煽っていた。

「完成といったな?それが完成すると一体どうなる?」

 次々に迫ってくる攻撃を軽く捌きながらリナさんは指揮官の近くへ接近する。

「貴様等に教える義理などない」

「残念だな。じゃあ未完成のまま破壊させてもらう」

「はっ!出来るものならやってみろっ!」

 リナさんの言葉に反応するように雷の物体は広範囲に雷を飛ばす。

「時雨っ」

「あぁっ」

 時雨さんはすぐにリナさんの元へと移動する。

 そしてリナさんの魔法によって攻撃を全て防ぎきる。

「破壊するといっても一体あれをどうするつもりなんだ?」

「分からん。だからしばらく観察してみるさっ」

 攻撃を全て防いだことで今度は攻防が一転する。

 とはいえ現状、雷の物体に対する有効打は思いつけずにいた。

 ザグからの報告を聞いた限りだと魔力を消費させることで体が小さくなるようだが、それだけでは倒せない。

 康生が作った魔力を使えなくなる装置も、魔力そのものには使えない。

 なので現状、雷の物体を倒す手だてはない。

 だが特製の装備のおかげもあり、相手をするのはそれほど苦ではない。

「ちっ……!」

 倒せる手段はないが、現状二人に翻弄されている状況に指揮官も舌打ちをもらす。

 お互いが決定打をもっておらず、まさに膠着状態となっていた。

(現状はなんとかなっているが、正直この装備の魔力が尽きてしまえば完全に逆転してしまう。特に時雨には魔力がない。それまでに何か決定打を思いつければ……)

 攻撃を避けることが簡単なのに、倒すことが出来ない状況。

 リナさんは装備の心配をしつつも、少し焦りの色を見せるのだった。




「ぐはっ……!」

 腹を思い切り殴られ、口から空気の塊を一気に出しながら吹き飛ぶ。

「殺す……殺す……」

 康生は飛んでいくザグを追いかけながら追撃しようとする。

「く、くそっ……!」

 振り下ろされた拳を寸前のところで回避しつつも、衝撃波でまた体が吹き飛ばされようとする。

「相変わらず厄介だなっ……!」

 ザグはなんとか踏ん張りながら、反撃しようと試みる。

(このままじゃまじでやばいぞ……。何か策があるようだけど、早くしてくれよっ……)

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