第521話 衝撃

「殺すっ……殺すっ……殺すっ……」

 康生はまっすぐザグを見つめてひたすらに「殺す」と呟き続ける。

 今まで攻撃されたことがなかったからか、完全にザグをターゲットに絞っているようだった。

「何やってんだよっ!何暴走してんだよっ!お前がそんなんでいいのかよっ!」

 対するザグは魔力暴走を起こす康生に対して怒りを爆発させている。

 だがそんな康生に対して雷の物体は再び攻撃を仕掛けようとしてくる。

「邪魔はさせないっ!」

 康生へとまっすぐ延びる雷の攻撃をリナさんが軽く防ぐ。

「雷か。私の得意魔法だな」

 余裕の表情でリナさんは反撃を繰り出す。

 雷系統の魔法が得意なリナさんは、まるで攻撃を流れが分かるかのように次々と避けていく。

「くそっ、私も負けてたまるかっ」

 時雨さんも負け時と雷の物体へと接近していく。

 これで康生とザグを邪魔するものはなくなった。

「さぁて。今度こそ勝たせてもらうぞっ」

 邪魔者がいなくなったことでザグは再び康生と向き合う。

「殺す、殺す……」

 だが康生は相変わらす同じことを繰り返し呟く。

「けっ、お前には誰も殺させねぇよっ!」

 ザグが答えた瞬間に康生が飛びかかってくる。

 音速のスピードを越えるそれは普通の人ならば一瞬のうちに殺されてしまう。

 だがザグもスピードに関しては康生のひけをとらない。

 メルンが作ってくれた装備のおかげもあり、ザグは難なく回避する。

「おらっ!目ぇ覚ませっ!」

 拳を突き出してきた康生に向かってザグは、カウンターを入れるように顔面に拳を入れる。

「・っ」

 しかし寸前のところでザグは吹き飛ばされてしまう。

 恐らく攻撃を避けるために全方位に強風を起こしたのだろう。

 今までのものとは威力が桁違いのものだった。

 いくら特製の装備でも完全には威力を押し殺すことが出来ずにザグは吹き飛ばされる。

 康生はその隙を見逃さずに、すかさずザグに向かって飛んでいく。

 今までの衝撃で地面に亀裂が入り、大地が割れたような錯覚を覚えながらザグはなんとか体勢を整えようとする。

「くっ、相変わらずの力だなっ」

 ザグに向かって飛んでくる康生を見て不適な笑みを浮かべた。

「だがお前みたいな奴に負けてたまるかよっ!」

 油断していたのか康生は再びザグにカウンターを入れられてしまう。

「くっ……!」

 攻撃の衝撃に康生は初めて呻き声をもらす。

 だが康生は吹き飛ばされずにその場でザグと対峙する。

「おいおいっ、今ので確実にアバラ折れてるだろうがっ!」

 そんなザグの言葉を聞かずに康生は再びザグに拳を振り下ろした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る