第462話 ひととき

「私だ、そっちの様子はどうだ?」

『はい、こっちの戦闘は問題なく終わりました。今そっちへと向かっているところです』

「そうか……。ところで、何やら周りが騒がしいようだが……一体どうしたのだ?」

 そう言ってリリスは電話越しに聞こえる声に眉をひそめる。

『あ、あぁこれですか……』

 そしてその電話の向こうでは上代琉生が言葉を濁していた。

 リリスはそんな上代琉生の声を聞き怪訝な表情を浮かべるが、それもすぐに声の正体を聞いて苦笑いを浮かべる。


『絶叫マシンってそれ危険ってことじゃないっ!』

『おいどういうことだ康生!お嬢様を危険な目にあわせようとしているんじゃないだろうなっ!』

『ふ、二人共落ちついてくださいって!』


 恐らく上代琉生が電話口を向けたのだろう、騒がしかった声がはっきりと聞き取れるようになった。

「はぁ……すまんなうちの者達が騒がしくしているようで」

 エルとリナさんの声を聞いたリリスはため息混じりに謝罪する。

『いえ、今回は英雄様が一方的に悪いので気にしないでください』

「康生が?……まぁ、確かにあいつもたまに中々やらかすからな。そっちは苦労しそうだな」

 上代琉生の言葉を聞いて、リリスは同情するような声で言う。

『それでそちらの状況はどうですか?』

 そうして上代琉生は電話口を元に戻して、リリスの状況を尋ねる。

「こちらはもうすぐ会議が始まる。全ての土地に放送が届くよう手配されているものだから、流石の我も少しばかり緊張しているだけだな』

 確かにリリスの声はいつもと比べ大分かたくなっていた。

『でも全ての地域なんてすごいですね。我々にとっては舞台として申し分ない』

 しかし、上代琉生はすぐにポジティブに考える。

 確かに、リリス達の思想を全ての人に届けるためにはこの会議はとてもうってつけのものだった。

「あぁ、あいつには感謝しないとな……」

『あいつ?』

「あぁ、父の古い友人の国王がいてな、そいつが手配してくれたのだよ」

『へぇ、そうなんですね』

 電話で報告しながらもリリスはその人物を思い浮かべる。

『えっ、もしかして今リリスと話しているのかっ?』


 すると電話の向こうから突然康生の声が響く。

『もしもしリリスっ?』

 少しすると電話口から康生の声が聞こえる。

「あぁ、康生か久しぶりだな」

『大丈夫そうか?』

「こっちは何も心配するな。康生の方こそ今から大変なのだろう?」

『それはお互い様だよ』

 としばらく康生とリリスは軽く挨拶をする。

『とにかく頑張ってねリリス。敵は絶対に俺達がくい止めるから』

「あぁ、期待しているぞ。我もその分しっかりとやる」

『うん。そうだね』

 そうして二つの戦いを前にして、康生達はひとときの時間を過ごすのだった。

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