第451話 見上げて

「はぁっ!!」

 剣の男がまっすぐこちらに向かって突進してくる。

 その速度は『解放』の力と同等のもので、康生も同じく『解放』の力を使って対抗する。

「食らぇっ!!」

 まっすぐ突撃してきて剣を振り下ろしてくる。

 その攻撃はただかわすだけではだめだ。

 かわしてもすぐに衝撃波や雷のダメージが襲ってくる。

「はっ!」

 だから康生はすぐに剣の男の背後に回る。

 だが剣の男はすぐに康生の動きに反応する。

 だがその速度に慣れていないのか、それとも体がついてこれないのか反応はできてもそこから攻撃に転じることはできないようだった。

 しかしそれでも全方位に雷を飛ばしているので普通ならば容易に近づくことすらできない。

(こいつっ……どれだけ魔法を使い続ければ気が済むんだ……!)

 先ほどから続けて魔力を消費し続けている剣の男を見て康生は歯がゆい思いをする。

(いや、とにかく動きに慣れていない今がチャンスだっ……!)

 剣の男が康生を追いかけてくるのに合わせてカウンターを入れる。

 だがすぐに雷に邪魔をされて攻撃を交わされてしまう。

「はぁっ!はぁっ!し、しねぇっ!」

 すると剣の男の様子がおかしいことに気づく。

(こいつ……やっぱり魔力消費が激しすぎて魔力が底をつきかけてる……)

 剣の男の様子を見て康生は若干の焦りにかられる。

(このままだと……いつ魔力暴走がおこってもおかしくないぞっ!)

「はぁっ!はぁっ!はぁっ!」

 すでに声をあげることすらきついのか、剣の男が息を荒くしながら攻撃してくる。

 だからこそ康生は速攻で仕掛けていく。

「これでっ、終わりだっ!」

 まずは一気に跳躍して剣の男から距離をとって姿を一瞬でもいいから眩ませる。

 同時に踏み込んだ際の衝撃波で剣の男の動きを封じる。

「くっ!」

 姿をくらました瞬間、康生はさらに速度をあげて移動を始める。

(死んでくれるなよっ……!)

 そしてその速度のまま剣の男へと向かっていく。

「ぐはぁっ!」

「うっ……!」

 一気に拳をぶつけて空へと吹き飛ばす。

 その際に雷で手を大きくけがをしてしまったが関係ない。

 康生は空へとうちあがった剣の男めがけて跳躍する。

「こ、うせいぃっ!!」

 剣の男はこちらへ向かってくる康生を見て鬼のような形相をうかべる。

 そのまま雷のように、一気に地面に向かって落下してくる。

 雷を纏った剣の男はまさに、巨大な雷そのものだった。

 どうやらそのまま康生もろとも死ぬ気でいるようだった。

 だが、

「絶対にお前は死なせやしないっ!」

 康生はそんな剣の男を見上げて叫ぶのだった。

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