第450話 真正面

「み、見えないだと……!?」

 光速のスピードで移動しているにも関わらず、剣の男は康生を見失った。

「くそっ!どこだっ!どこに隠れたっ!」

 それでも剣の男はスピードを緩めることなく必死に康生の姿を探す。

「こっちだ」

 するとそれに答えるように康生が姿を現す。

「き、貴様っ!」

 だが剣の男が反応するよりも前に、康生は剣の男に針を差し込む。

「これで大人しくしていろっ!」

 それは先ほどから隊長達の動きを封じている麻痺薬がたっぷり塗り込まれた針だ。

 今まで同様、鎧の隙間から差し込む。

 これで剣の男は体がしびれるはずだ。

「……こっ、こんなものっ!!」

「はっ!?」

 だが剣の男は動きを止めるわけでもなく、剣を振り回す。

「こんな私には効かぬぞっ!!」

 体が痺れるわけでもなく、今までと同じ動きをする。

「はぁっ!!」

 先ほどよりも魔法を高め、さらに全身を雷に包む。

 どうやら雷の魔法で麻痺薬を打ち消したようだ。

「ふっ!油断したなっ!」

 麻痺薬が効かなかったことで康生は油断していたのか、剣の男の攻撃の対応に遅れる。

「ぐっ!」

 そのため攻撃を直接食らってしまった。

 咄嗟に雷魔法を使用して少しでもダメージを軽減させる。

 雷によるダメージは防げたものの、決してダメージは軽いものではなかった。

「死ねぇっ康生っ!!」

 攻撃が入ったのを見た剣の男は、さらに攻撃をいれようとする。

「そうはっ、させないっ!」

 そう言うと康生は剣の男を殴る。

「ぐはぁっ!!」

 衝撃波が響き剣の男は吹っ飛ぶ。

(くそっ……この力は使う予定じゃなかったんだけどなっ……。思った以上にきつい……)

 剣の男を離すことに成功はしたが、衝撃波により傷が激痛が走る。

「ま、まだだぁっ!!」

 恐らく骨の一本や二本は折れているはずだ。

 だが剣の男は止まることなく、さらに雷を纏ったまま攻撃の姿勢に入る。

「お前っ!死ぬぞっ!」

「それでお前を倒せるなら本望だっ!」

「くそっ!」

 恐らく今の攻撃も加わって剣の男の体は相当やばいはずだ。

(このままだと本当に死ぬぞっ……!とにかくすぐに魔道具を使わないと……)

「ははっ!死ねぇっ!康生っ!」

「くそっ!仕方ないっ!」

(なんとかもってくれよっ……!)

 康生は決意を決める。

「いくぞぉっ!!」

 恐らく今まで最高峰の力を剣の男が出す。

 剣の男の周辺が放電し、近づくことでさえ困難な様子だった。

 それを見て、康生はゆっくり息を整える。

(うまくいくかは一か八か。やるしかないっ!)

 こちらへ向かって攻撃してくる剣の男を真正面に見据え、康生は力を解放させる。

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