第452話 異変

(このままではどのみちあいつは死んでしまう。だからこの空中でけりをつけるっ!)

 康生へと向かって降ってくる剣の男を睨みながら康生は魔道具を取り出す。

「そんなものっ!私に効くと思うなよっ!」

 剣の男は、康生が取り出した魔道具を見みるとすぐに雷を飛ばしてくる。

「くっ」

 康生は雷を避けるために魔道具を犠牲にする。

「はっ!そんなものに頼るな康生っ!貴様はそんなことをしなくても十分強いはずだろっ!?」

「あぁ、そうだよっ!」

 魔道具を失ってまさに己の体と体でぶつかりあう一騎打ちの状態。

 だがそれは康生がそう誘導したもの。

(よし、これでうまく魔道具を壊させて油断させた。きっとあいつは真正面から襲ってくると思ってるはずだ)

 そう。康生はわざと魔道具を破壊させ、剣の男に一騎打ちを連想させた。

 康生はそんな思いこみの隙をうまくつこうとしているようだ。

「死ねぇっ!」

 そんなこととはいざ知らず、剣の男は叫ぶ。

 すでに距離は近く、あと少しでお互いの攻撃がぶつかりあう。そんな距離だった。

(うまくいってくれよっ!)

 そして剣の男が、自らの剣を思い切り振り下ろす。

 落下になる衝撃も加わって、その威力は壮大なものになっているのに違いない。

 だからこそ康生はそんな剣の男に向かって拳――ではなく小さな玉を投げつける。

「なっ!?」

 その瞬間、剣の男の視界が真っ白に染まる。

 小さな玉からは、空中に広がるように煙が出てきた。

「貴様ぁっ!ここまできてよくもこんなことがっ!?」

 その行為に剣の男はさらなる怒りを示す。

 煙を全て吹き飛ばしてしまうほどの雷を発生させようとしていた。

 だが、

「あいにく俺とお前じゃ勝利条件が違う。だから許してくれよっ」

 突然の煙の発生によりわずかに生まれた隙、その隙を狙って康生は一気に力を爆発させ、気配を消したまま剣の男の背後へと移動していた。

「なっ!」

 咄嗟のことに判断しきれず剣の男はすぐに康生を振り払おうとする。

 だがそれよりも先に康生は魔道具を使用する。

(動きを止めなくてもこれなら絶対にいけるはずっ!)

 剣の男の全身を纏う、雷を一心に受けながら康生は魔道具を押し当てる。

「こ、康生ぃっ!」

 そしてその間にも剣の男が攻撃しようとしてくる。

 だが剣が振り上げられる寸前で、剣の男の魔力がぴたりと止まる。

 その衝撃で剣の男の意識も一緒に刈り取られてしまった。

「よし、これで…………どういうことだ」

 あとは剣の男すぐに運んで治療してもらうだけ。

 そう思っていた康生はそこで異変に気づいた。

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