第439話 一刻
巨大な火の玉が時雨さんに向かって飛んでくる。
隊長達の相手をしていたからこそ、それに気づくことができなかった時雨さんはすぐに逃げようとする。
だが、
「行かせないっ!」
近くにいた隊長達がそれを阻む。
「何をしているっ!貴様らも死んでしまうぞっ!」
火の玉が向かってきているというのに、逃げようとせずに武器を振り下ろしてくる隊長達に時雨さんは困惑する。
時雨さんとそれほど距離がないので、当然あの火の玉を直撃してしまう。
なのに逃げずに隊長達はひたすらに攻撃を仕掛けてくる。
「貴様ら死ぬ気かっ!?」
隊長達の対処をしながら時雨さんは叫ぶ。
「そんなつもりはねぇよっ!」
「なんだと……?」
時雨さんは隊長の言葉を聞き難色を示す。
お互いが武装解除を行っているので、時雨さんにとっては一瞬の気も抜けない状況だが、それでも隊長達の不可解な行動に眉をひそめるばかりだ。
「俺達は皆炎の魔法を使える!あれが直撃する寸前に全身に火を纏えば俺たちは助かるんだよっ!」
「そういうことかっ!」
つまり隊長達は時雨さんの足止めをしているだけ。
いくら時雨さんでもあの火の玉を防ぐことはできない。
そして逃げようとしても敵に周囲を囲まれているため逃げれない。
まさに絶体絶命の状況だった。
「しかしそれだけの魔力量があるのかっ?」
ギリギリのところで攻撃を回避しながらもここから回避する策を模索する時雨さん。
そこである一つの疑問が浮かんだのだった。
「あぁ?そんなのしらねぇよっ」
「やはり……」
どうやら隊長の言葉を聞いて時雨さんは何やら思いついたようだった。
「お前達は知らないだろうが、魔力を全て消費してしまうと死んでしまうぞ!貴様らはただでさえ人間だ!どうやって魔力を補充しているか知らぬが恐らくそれだけの魔法を使えば死ぬぞっ!」
そう。魔力を使いすぎるとどうなるかは時雨さんは嫌というほど見てきたのだ。
そしてエルの言葉も散々聞いていたので、なれの果ても知ってる。
だからこそ時雨さんは隊長達に訴えかけた。
「はっ!そんな嘘信じるわけねぇだろうがっ!」
しかし隊長達は信じようとはしなかった。
「くそっ!一体どうやったらっ……!」
このままでは隊長達も死んでしまう。
そう考えた時雨さんはさらに焦る。
(この状況を一人で切り抜けるのはできないことはない。だがこのままこいつらを見捨ててしまえば、私たちの信条に反する……。一体どうすれば……)
この状況を打破するために思考を巡らせる時雨さん。
しかしそんな時間もなく火の玉は刻一刻と近づいてきていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます