第437話 その場

「だが時雨っ!俺達は武装機械なんぞに頼らずとも魔法があるんだよっ!」

 時雨さんと対峙していた一人の隊長がその手に炎を出現させる。

「その程度っ!」

 だが時雨さんは屈することなく素早く対処する。

「くそっ!」

 魔法を発動したのはいいが、すぐに時雨さんに攻撃されてしまい炎が消えてしまう。

 そんなことに隊長は苛立ちを覚えながら武器を構える。

「ならこれならっ!」

 そう言って隊長は再び剣に炎を纏わせる。

「死ねっ!」

 これならば防ぎようがないと思ったのだろう。時雨さんに向かって一直線に剣を振り下ろす。

「遅いっ!」

 しかし一直線の攻撃が当たるはずもなく、呆気なく避けられてしまう。

 そしてすぐに時雨さんが攻撃を加え隊長は吹き飛ぶ。

「くそっ!やるぞお前達っ!」

 隊長が吹き飛ばされると周りにいた者達が一斉に時雨さんに飛びかかる。

 複数いれは勝てると思ったたのだろう。

 そして皆武器には炎を纏わせている。

「武装解除っ!」

 だが時雨さんは武器が振り下ろされる前に一瞬のうちに移動してしまう。

 武装解除はスピードがあがるが制御するのが難しい。

 だが一瞬だけ発動すればそのデメリットを解消できる。

 そう思って康生が開発した武装機械はまさに完璧だった。

「ちっ!そっちに行ったぞ!」

 しかしやはり相手は同じ隊長格。さらには人数が多い。

 いくら時雨さんでもその人数相手だと対処が難しくなってくる。

「くっ!」

 時雨さんが移動した位置に素早く他の隊長達が回ってすぐに攻撃を仕掛ける。

 すぐに対処することができなかった時雨さんは武器を構えてそれを防ぐ。

 しかし再び背後から攻撃されそうになり、すぐに武装解除を発動する。

「はぁ……はぁ……」

 流石の時雨さんも連戦ということもあり疲れているのか、少し戦っただけで肩で息をしていた。

「ふっ、所詮はその程度だな!反逆者は素直に処刑されておけっ!」

 そのチャンスを隙と見たのか隊長達が再び一斉に攻撃してくる。

 今度は全方位を囲うもので逃げ場はない。

「これでおしまいだっ!」

 一人の隊長が叫ぶ。

 逃げ場のない攻撃に時雨さんはたじろぐ。

 しかし、

「まだだっ!」

 時雨さんは諦めない。

 周囲を囲まれたのならば上に逃げればいいと、康生のように時雨さんは上空へ向かってジャンプする。

「ちっ!」

 避けられたことに苛立ちを感じながらも隊長達はすぐに体勢を立て直し上空へ向かって炎を放ったり、魔法が付与された銃を撃つ。

「この程度っ……!」

 逃げ場のない上空を狙われての攻撃だったが、時雨さんは無理矢理に体を動かし避けようとする。

 しかしそれでも逃れるほど甘くはなかった。

「くそっ!こうなったらあれを使うしかないかっ!」

 そういいながら時雨さんはすぐに腕を伸ばした。

 その瞬間、時雨さんは吹き飛ばされるようにその場からいなくなったのだった。

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