第436話 貴様

「教育だとっ?この人数相手にいっぱしの隊長一人が勝てるわけないだろっ!」

 時雨さんの言葉を挑発をと受け取った隊長達はすぐにそれぞれ戦闘体勢をとる。

「我々の新しい力を少し見くびっているようだなっ!」

 そういって隊長の一人が時雨さんへと切りかかる。

 その剣には真っ赤な炎が纏う。

 どうやらこの隊長達は全員魔法が使えるようだ。

「見くびっている?」

 しかし今度はリナさんが行動に出る。

 迫り来る炎の剣を翼の風だけで消してみせる。

「見くびっているのはどちらだ?ちっぽけな魔法で私達を倒せると思うなよ?」

 そう言ってリナさんは雷を放つ。

「くっ!」

 流石に異世界人であるリナさん相手だときついのか隊長達は一度下がる。

 しかしすぐに数人のグループに別れる。

 恐らくそれぞれ連携プレーで戦おうとしているのだろう。

「私を忘れてもらっては困るぞっ!」

 しかしいくつかに分かれたグループに向かって時雨さんが飛びかかる。

「お前などっ!」

 だがすぐに時雨さんの攻撃を防がれる。

「所詮貴様は弱いのだよっ!」

 攻撃を防がれ、隙ができた時雨さんの背後から隊長が一人切りかかる。

「弱い、だと?」

 しかしその瞬間時雨さんの鎧が淡い光を帯びる。

「ぐはっ!」

 その瞬間、背後から切りかかろうとしていた隊長は吹き飛ばされた。

「武装解除かっ!」

 時雨さんの鎧を見て隊長達は咄嗟に距離をとる。

「だがその力もたかが知れている!すぐに時間が切れて……」

 と言おうとしたところで隊長達はある違和感に気づく。

「光が、なくなった……?どういうことだっ!貴様は武装解除を使ったはず!なのにどうして光が消えてっ……!?」

 そもそも武装解除とは身体能力を無理矢理あげるもの。鎧に仕組まれているため装置は小さい。

 だから本来一度武装解除を使えばエネルギーがなくなるまで解除ができないようになっている。

 しかし時雨さんの鎧は一度武装解除したにも関わらず、消えている。

 隊長達はそんな未知の技術に戸惑う。

「さぁ!よそ見をしている暇はないぞっ!」

 そんな隊長達にリナさんはさらに攻撃を加えた。

 そうして時雨さんとリナさんによる戦いが始まったのだった。




「そうか、奴らもう敵陣へ突撃したか」

「そのようですね」

 地下都市から少し離れた場所で透明になって隠れている敵兵達がいた。

「それと情報によれば、康生は各地に潜んでいる同胞達を殲滅しているようで」

「なるほどっ、ということは何もしなくてもあいつから来てくれるというわけかっ」

「そのようですね」

「ふはっ!」

 すると突然敵兵の一人が笑い出す。

 ここが戦場で、かつ身を潜めているのにも関わらず高らかに笑う。

 まるで何かを待ち望んでいるかのように。

「早く来い康生っ!早く貴様の顔を見せてみろっ!」

 そう言って男はさらに高らかに笑い声をあげるのだった。

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