第433話 音

「よし、行ったな」

 康生が敵兵を殲滅するために飛び立ったのを近くで観察していた人影があった。

「やはり上代琉生を尾行して成功だったな」

「あぁ、あいつらのおかげで隠し通路を見つけることができた」

「それもこれもこの魔道具のおかげだな」

 そう言って男達はひっそりと移動を開始する。

 どうやらこの者達は今まで上代琉生達の行動を観察していたようだ。

 いくら透明になっていても、上代琉生相手にはバレてしまいそうだが、新たに開発された魔道具の力を使って追跡されていたようだ。

 そうしていくらかの敵兵達は城壁の中へと通じる隠しルートのを発見することができたという。

 流石に城壁の中までは監視はおらず、また上代琉生の部隊も敵主力を見つけるために全て出払っているため、誰にも見つかることなく侵入に成功したようだ。

「さて、ここからどうする?奴が帰ってくるまでの間にここを制圧するか?人質さえいれば、向こうも手出しはできないだろうし」

「そうだな。しかし気を抜くなよ?奴らの中には異世界人が混じってる。いくら我らも魔法が使えようが、やはり奴らには多少劣る」

 などと作戦会議を進めている。

 康生がいない今がチャンスと見ている敵兵は、突撃するタイミングを見計らっているようだった。

「――今しかないか」

 時間を置けばおくほど、味方が減っていくのが分かっているのか、その者達は時間かかかることを避け、今すぐに突撃しようと考えた。

「そうだな」

「皆覚悟は決まっているか?」

「あぁ、魔法の準備もばっちりだ」

「それに俺達にはこれがある」

「そうだな。それさえあれば奴らが勝つことはまずない」

 などと男達はそれぞれ覚悟を決める。

 その表情は覚悟が決まっているものだった。

「じゃあ行くか」

「おうっ!」

 そうしてかけ声と共に皆一斉に飛び出していくのだった。




「上代琉生っ!敵兵の数が確実に減少しているぞっ。これからどうするつもりだ?」

 城壁の中に戻ってきたリナさんが上代琉生の元へとやってくる。

 どうやら敵兵が減り、いくらか余裕が出てきたようだ。

「まだ油断はしないでくださいね。今のところ敵の数は半分も見つけていません。いつどこで敵がでてくるか分かりませんからね」

「確かにそうだが、このまま防戦一方でいるつもりか?」

 敵を発見していないことを気にしながら、上代琉生は注意を促す。

 しかしリナさんは現状維持の状態を変えたいようだった。

「大丈夫ですよ。俺の予想だともうそろそろ敵は次の手を打ってくるはずです」

「そうか?」

 どうやら上代琉生は敵が次の行動に出るのを待っているようだ。

 先手を打たれるのを承知で待っている上代琉生にリナさんは若干驚きつつも、その判断を信じているようだった。

「どの道、現状の最前手は打ってます。あとはこちらが気を抜かない限りなんとかなるはずですよ」

 そして上代琉生が言い終わると同時に、爆発音が響くのだった。

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