第434話 緊張

「どうしたっ!」

 爆発音が響くと同時に上代琉生はすぐに事実確認を行う。

「それがっ、我々の秘密通路を利用されて敵部隊が内部に侵入してきましたっ!」

 隊員の一人がすぐに上代琉生に報告する。

「ようやくきたかっ!」

 それを聞くや否や上代琉生はすぐに時雨さん達に無線をかける。

「手の空いてる者はすぐに城壁内に戻ってください!敵が内部に侵入してきました!城壁を守っている戦力もこちらに回ってください!」

「何っ!?」

 城門で敵兵をくい止めていた時雨さんはすぐに反応した。

「一体どういうことだっ!」

 そして現場を部下達に任せて時雨さんはすぐに上代琉生の元へと行く。

「外で応戦しているリナさん達を戻してくださいっ。残りの敵兵は全て城門前で打ち止めてください!」

 すると上代琉生はすぐに時雨さんに指示を出す。

 今は状況を説明している暇がないのか、城壁中に入ってきた敵兵の対処に追われている。

「分かった!それじゃあ城門前は部下達に任せる!時雨!私たちは侵入者の撃退にあたるぞ!」

 そしていつの間にか戻ってきていたリナさんがすぐに対応しようとする。

「なっ!いいのか!城門前だってまだ敵が!」

 時雨さんの言うように城門前にはまだ敵兵がたくさんいた。

 それを時雨さんとリナさんのいない中で対処できるか不安のようだった。

「大丈夫です。今は城壁の攻撃が薄いですから、そちらの戦力を回させます。それに英雄様の魔道具がありますので、最悪の場合はそれを使うように言ってます」

 突然のことながらも流れるように対応策をうちだす上代琉生に時雨さんは少し呆気にとられながらも、時間がないことを思い出しすぐに指示に従う。

「康生を戻した方がいいんじゃないのっ?」

 時雨さんとリナさんが対応に向かうのを見送ると、近くまで来ていたエルが提案する。

「いや、恐らく敵主力はまだいます。そのためにも英雄様には引き続き伏兵の対応してもらいます」

 どうやら上代琉生は今回の攻撃もまだ主力ではないと判断したようだ。

 エルにはその判断の理由は分からないが、今は従う他なかった。

「じゃあ私は引き続き皆の傷を癒しておくね」

「はい、よろしくお願いします」

 そう言うと上代琉生はリナさん達とは別の方向へ向かって走り出したのだった。




「こいつらっ……!」

 侵入者の元へとたどり着いた二人。

 そしてその侵入者を見て、時雨さんが驚愕の表情を浮かべる。

「時雨、こいつらを知っているのか?」

「あぁ、こいつらは他の地下都市でそれぞれ隊長を務めていた者達だ」

 そう言って時雨さんは久しぶりに会う顔ぶれを見ながら、わずかに緊張するのだった。

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