第432話 スピード

「よし、じゃあ俺もそろそろでるよ」

 休憩所で十分休息をとった康生は早速戦場に向かおうとする。

「うん、頑張ってね」

 エルはそれを心配そうに見送る。

 十分休憩をとった康生は、一刻も早くリナさん達の負担を減らすために戦場へ行こうとする。

「あっ、英雄様っ。ちょっといいですか?」

「んっ?」

 しかしその寸前で上代琉生に呼び止められてしまった。

「英雄様には別途お願いしたいことがありまして」

「お願い?」

 勢いよく戦場へと行こうとしていた康生だったが、出鼻をくじかれて慌てて立ち止まる。

「はい。今我々の部隊が各地で敵兵を発見しました。皆魔法を使えるようなので、英雄様には今からそちらの対処をお願いします」

 康生には迫り来る敵の対処よりかは、各地で隠れている敵兵の殲滅にあたった方がいいと判断したのだろう。

 上代琉生の考えている通り、現在城門前ではしっかりと敵の侵攻をくい止められている。

 ならば増援が来る前に、少人数で油断している敵兵を殲滅してもらえば短縮になる。

 だからこそ上代琉生はしばらく康生を休ませていたのだった。

「……分かった。そいつらを倒せばこっちの負担も減るからな」

「はい。それにどこかに敵主力が隠れている可能性もあるので」

 ということで康生は上代琉生の指示の元、各地に隠れている敵兵の位置を教えてもらう。

「それじゃあすぐに行ってくる」

「頑張ってくださいね」


 二人は短い言葉を交わし、康生がすぐに空に飛び出て行った。

「さてと。じゃあこっちは残りの仕事を終わらせますか」

 康生を見送った上代琉生はすぐに足を進めるのだった。




「ここか」

 指示のあった場所に到着するや否や康生はいきり衝撃波を地面めがけて放つ。

「うわっ!」

 すると何人者叫び声とともに今まで透明になっていた敵兵の姿が明るみになる。

「ちっ、バレたぞ!皆の者!いくぞっ!」

 しかしすぐに体勢を整えた敵兵は空中にいる康生に向かって魔法や銃玉を飛ばしてくる。

「遅いっ!」

 だが今の康生にとってそんな攻撃は食らうはずもなく、一瞬の内に敵兵を殲滅してしまう。

「お疲れさまです」

 敵兵を殲滅すると、近くに隠れていた上代琉生の部隊が姿を現す。

「後処理はこちらでしますので、英雄様はどうぞ次の地点へ」

「分かった」

 そう言って康生は敵兵達を任せてすぐに次の場所へと飛んでいった。

(もっと早くっ、少しでも時雨さん達の負担を減らさないとっ)

 そんな思いの元、康生はさらにスピードをあげるのだった。

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