第394話 顔面
「ぐ、はっ……!」
ザグの口からは空気の塊のようなものが飛び出るように、そしてむせかえるように息を吐き出す。
一度康生の『解放』の力で攻撃しても腕が少し折れる程度だったザグだ。
おそらくこの攻撃でも戦闘不能にはならないと判断した康生はすぐにザグから距離をとる。
「て、てめぇっ…!」
康生の読み通り、康生が退くのとほぼ同時でザグは背後の康生に向かって拳を奮う。
「ちっ」
攻撃がはずれたことで舌打ちをしたザグは、すぐに攻撃に移るのではなくただ腹を押さえてじっとしていた。
どうやら思った以上にダメージが入ったようだった。
「ザグっ!お前の目的はなんだっ!」
康生は『解放』の力を使わずにザグに向かって走る。
「目的だとっ!そんなもの決まってるっ!」
振り上げられた康生の拳を、ザグはそのまま受け止めて、すぐに反撃に出る。
「お前に勝つことだよっ!」
だがそれもすぐに康生が受け止める。
両者拳と拳をぶつかり合わせる激しい攻防が続く。
「そうかっ!それは俺も同じだっ!お前とはしっかり決着をつけて起きたかったっ!あの大会は結局向こうになってしまったからねっ!」
「あぁ!その通りだっ!」
激しい攻防を繰り広げながらも、康生もザグもどこか楽しそうに笑みを浮かべながら攻撃を繰り出している。
「……」
そんな光景を奈々枝は不思議なものでもみるかのようにして眺めているが、きっと奈々枝には今の康生達の気持ちは分からないのだろう。
「お前に勝って!俺は優勝するんだよっ!」
「それはこっちの台詞だよザグっ!」
瞬間ザグの拳が康生の腹に直撃する。
しかし康生はひるまずに拳を振り上げ、今度はザグの顔面めがけて拳を振り下ろす。
「「ぐっ!」」
お互いがお互いに鈍い声をあげてひざを地につかせる。
「中々やるじゃねぇかっ……」
「そっちこそっ……」
お互い、全身を殴打の痣でいっぱいになりながらもまだ戦おうとしている。
しかし両者は傷を負いすぎたのか、思うように体が動かない様子だった。
「行くぞっ!」
そんな中康生が最後の力を振り絞って立ち上がる。
「お前には負けねぇんだよっ!」
それを見たザグも負けじと立ち上がる。
「おらぉっ!」
先に攻撃を仕掛けたのはザグだ。
再び大きく振りかぶって、今度は康生と同じように顔面を狙う。
「遅いっ!」
だがそれは康生に簡単に交わされてしまう。
康生はふらつく足で力いっぱい体を支えたまま、再びザグの顔面に拳をたたき込む。
「おらぉっ!!」
康生の叫び声とともに、次の瞬間ザグはその場に崩れ落ちたのだった。
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