第393話 背中
「ちょうどいいっ!あの時のリベンジマッチといこうじゃねぇかっ!」
ザグの高ぶった声が聞こえると同時にザグの姿が消える。
「くそっ!」
康生は全く話が通じないことに苛立ちを覚えながらすぐに対応する。
「英雄様っ!」
決死の戦いが始まりそうなことを察した奈々枝はすぐに二人を止めようとしようとする。
だが、
「こっちに来るな!今来れば死ぬぞっ!」
康生はすぐさま奈々枝を抑制させる。
あまりに鬼気迫った迫力に奈々枝は立ち止まる。
奈々枝はバカではない。だから今この戦いに介入すれば抵抗する暇もなくやられてしまう。
それが分かっているからこそ、奈々枝は何も出来ずにただ見守ることしか出来なかった。
「元々は俺の問題だっ!だから俺に任せろっ!」
そう言って康生はザグの攻撃を受け止める。
「へっ!どうしたっ!本気を出さないのかっ!?もっと俺を楽しませてくれよぉっ!」
「あぁっ!分かってるよっ!これも話し合いなんだからなっ!本気でいかせてもらうぞっ!」
「けっ!何が話し合いだっ!」
攻撃が受け止められたことでザグは再びその姿を消して、すぐに次の攻撃へと移る。
康生はそのわずかの間に準備を進める。
「『解放』っ!」
ザグが再び攻撃を仕掛ける時には、康生の姿はすでにそこにはなかった。
「ちっ」
ザグはすぐに周囲を確認し康生の姿を探す。
その構図は完璧に先ほど逆転していた。
「俺の技を真似ようってかぁっ?」
「そうだっ!」
その瞬間ザグの目の前に康生のグローブが出現する。
「へっ!遅いんだよっ!」
だがザグは先ほどの康生のように、回避するようにその場を移動する。
しかし、
「それはこっちのせりふだっ!」
ザグが移動した先、そこにはすでに康生が待ちかまえていた。
「なっ!?」
咄嗟にスピードを緩めたザグ、しかし急に止まれるわけもなくそのまま康生の攻撃が命中してしまう。
「まだだぁっ!!」
だがザグはタフな体でその一撃を耐え、康生が攻撃をしている隙にすかさず攻撃を加える。
「おらぉっ!」
ザグの拳が康生の腹に命中する。
「ぐっ……!」
攻撃を食らった康生はすかさず背後へ後退する。
「へっ、どうやら体は中々やわなようじゃねぇかっ!流石人間だなっ!」
「くそっ!」
康生の装備はたいていの攻撃を防ぐように設計してあるが、やはり純粋な威力の攻撃を全て相殺することは難しかったようだ。
「さぁさぁっ!もっと楽しませてくれよっ!」
ザグはそんな康生を見て勝ち誇ったように大きく吠える。
「仕方ない。それじゃあすぐに決めさせてもらうぞっ」
「あぁっ?」
ザグの煽りに康生は静かな声で答える。
かと思った瞬間、康生の姿はそこから消え、いつの間にかザグの背後へと移動していた。
「なっ!?」
ザグが反応するよりも速く、康生の拳がザグの背中に突き刺さるのだった。
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