引き篭もって10年間〜外に出たら世界が滅んでいました〜

第392話 光速

「久しぶりだねザグ」

　眩しそうに目を細めたザグが地下の中から出てくる。

　その姿に若干の懐かしさを覚えながら康生は、ザグの反応が返ってくるまでじっと待機する。

「ど、どうしてお前がここに…………」

　ザグは康生の姿を見た途端に信じられないものでも見るかのように固まってしまう。

　そんなザグを見ながら、康生はすぐに暴れ出してしまわないか観察を続ける。

「ザグがここに来ていたのは知っていた。お前の目的は俺だろ？だからこうしてお前を待っていたんだよ」

　未だ状況が掴めていないザグに対して康生は簡単に説明をいれる。

　それを聞いたザグはわずかに反応を示すが、すぐにはっとしたように隣をみる。

「お前っ、まさか……！」

　ザグの隣にいた奈々枝は少しだけ申し訳なさ宇な表情を見せたと思うと、すぐに頭を下げた。

「ごめんなさいお兄ちゃん」

　今まで心の支えとなっていた奈々枝の存在が一気に裏切り者へと変わった瞬間、ザグの表情が瞬時に変わる。

「なるほど、そういうことかっ」

「奈々枝っ！危ないっ！」

　その瞬間、康生が大声を出したかと思えば、次の瞬間には奈々枝の体は康生が抱き抱えていた。

「ちっ、相変わらずすばしっこいじゃねぇかっ！」

　それを見ながらザグは振り下ろした腕を再度構える。

　その腕があった場所はなんといっても、先ほどまで奈々枝がいた場所だった。

「あ、ありがとうございます英雄様」

　それの光景を見た瞬間、自分が死んでいたかもしれない未来を見た奈々枝はわずかに恐怖を感じたのか体を震わせた。

「次ははずさねぇぞっ！」

　そしてザグは再び動きだす。

　そのスピードは、奈々枝と遊んでいた時のスピードとは段違いに速く、当然魔法のブーストもしっかりかかっていた。

「くそっ！」

　康生はすぐに奈々枝を地面におろすと、ザグの攻撃に対処する。

　拳と拳がぶつかり合い、その瞬間に空気が割れるような衝撃が二人を襲う。

「結局お前達人間は敵なんだよなぁ！」

「違うっ！話を聞けザグっ！」

「うるせぇっ！」

　もはや聞く耳を持たないザグは、康生の言うことなど何も聞かずに、ただ攻撃を仕掛けてくる。

　それは完全に康生を殺そうとするほどの威力で、先ほどからどす黒い殺気を放っていた。

「俺はお前と敵対したいわけじゃないっ！」

「だからお前の話は聞かねぇんだよぉっ！」

　ザグが攻撃を仕掛け、康生はすかさずそれをいなしながら会話を試みようとするか、やはりザグはそれを攻撃という手段でつぶしてくる。

「ちょうどいいっ！あの時のリベンジマッチといこうじゃねぇかっ！」

　そうしてザグは、あの時のように姿を消すほどの光速移動で康生に攻撃を仕掛けてくるのだった。