第391話 外

「本当にここであってるのか?」

「うん、大丈夫だよ」

 下水道の中を二つの陰が移動している。

 現在は本来ザグが寝床にしていた場所から大分歩いた距離にいた。

 いいとこがあると言われてザグは何も言わず後をついているが、しばらく歩いても目的の場所に着かないため、少しばかりに疑問に思っているようだった。

「あっ、ここだよお兄ちゃん」

 しかしようやく目的の場所にたどり着いたことでザグはほっと胸をなでた。

 どうやらこんなところで迷子になれば、一生出られないと思っていたようだった。

「だけど外で遊ぶのは少しだけだぞ?」

「分かってる、分かってる」

 奈々枝は笑顔で地上へと出る梯子を登っていく。

「しかし……ここは中々に高くないか?」

 上を見上げるも天井が見えないほど高い梯子にザグは違和感を覚えた。

 とはいえ奈々枝は軽い身のこなしで梯子をのぼっていくので、ザグもそれに負けじとそのまま登ってく。

「あっ、もうそろそろだよお兄ちゃん」

「たくっ、一体どこまで連れて行く気だよ……」

 ようやく地上へと出る入り口を見つけたザグはため息混じりにそう吐き出す。

 だがすぐに奈々枝が開いた扉から強い光が差し込み、ザグは目を細めながらその扉をくぐる。


「待っていたよザグ」


 その瞬間、ザグの耳に聞き慣れた声が届くのだった。

「あぁん?お前は……」

 まだ視界が完全に慣れていないのか、ザグはその人物に気づくのに遅れる。

 だがすぐに目が慣れると、ザグは驚きのあまりその場で固まってしまうのだった。

「久しぶりだねザグ」

 ザグの目の前に現れたのは、完全装備に身を包んだ康生だった。




「本当に一人で大丈夫なの?」

「あぁ、心配はいらないよ」

 無事に退院を迎えた康生はまず真っ先に自らの工房へと向かうとした。

 工房へ行き、自らの装備を整えるためだ。

 これも全てザグと対面することに備えてのことだ。

「私、くれぐれも安静にしてって言ったのに……」

 そんな康生の横でエルは、大きなため息を吐く。

「多分そんな大きな戦いにはならないから大丈夫だよ。そうするためにも俺一人で行った方が都合がいいだろうし」

「確かにそうなんだけど……」

 エルは病み上がりの康生がザグと会うことに反対しているようだ。

 どうやらリリス達から、ザグは康生を倒そうとしているという話を聞いて心配しているようだった。

「ほら、エルも仕事があるんだろ?これは俺が持ってきた問題だから、俺一人で解決させてくれ」「康生一人じゃなくて、奈々枝ちゃんもだけどね」

「そ、それはそうだけど……」

 奈々枝に協力してもらっていることに康生は若干の後ろめたさを感じながらも、すぐにその思いを振り払う。

「とにかく、これは俺に任せて。その分エルもしっかり頑張ってね」

「分かったわよ。でもくれぐれも無理しちゃだめだからねっ!」

 そうして康生はエルと別れた後に、準備を済ませ地下都市の外へと出るのだった。

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