第389話 国へ
「皆の者集まれっ!」
リナさんが大きな声で叫ぶと、すぐさま異世界人達がリナさんの前に集合する。
リナさんの表情からただならぬ気配を感じ取ったのか、皆じっと静寂して次の言葉を待っている。
「たった今康生が目覚めたことは皆も知っている通りだ。今のところ体調はなんら問題のないようだからいらぬ心配はしなくていいぞ」
「おぉっ!」
康生が無事という報告を改めて受け、異世界人達は皆それぞれ喜びの表情を浮かべた。
「そして今、お前達を集めたのは他でもない。これから異世界の国へと戻る者達を決める」
「えっ!?」
リナさんの言葉を聞いた瞬間、その場が一気にざわつき始める。
今まで人間界で普通に暮らしていた異世界人達は当然、これから先もここで暮らすものだと思っていた。
なのに、それが突然国に帰ることになるなんて当然驚いて当たり前だ。
「静まれっ!今から理由を話すっ!」
ざわつく空気の中、リナさんが一言声をあげると、その場はまた先ほどのように静寂が包む。
どうやら人間界で暮らしても、リナさんの部隊の指揮は全く下がっていないようだった。
「お前達にも話したが、今リリス上王が新たな国を作った。我々と人間達が手を取り合えるような、父上の想いの元にだ!」
ここにいる異世界人達は皆リナさんの部下以前に皆リリスの配下であるのだ。
その本当の主が今危機に陥っているということで、こちらからも戦力として国に戻るという話のようだ。
「だけど、これからこっちも戦いが始まるんだろっ?そこで俺達が抜けちまっていいのか?」
とそんな中、異世界人の一人が疑問を口にする。
確かにリリスは危機に陥っている。
だがそれはこちらも同じこと。
今、全ての人類がここをつぶそうと動いていることは皆知っている。
だからこそここに残って戦いたいという思いが強いのだろう。
「そんなことは知っているっ!だが、リリス上王様を見捨てるわけにはいかない!だからこそ、皆これからはより一層鍛錬を怠るなよっ!」
リナさんの怒声にわずかに怯えるように皆歯を食いしばる。
どうやらこれで皆の思いは一つになったようだ。
「国に帰る者の選考はこれから行う。各自いつでもここを出れるように準備しておけっ!」
「「「はっ!」」」
今の話だけでは、異世界人達は当然不安や呑みきれないことがある。
だがそれでも皆は綺麗に声を張り上げて命令を受け入れる。
そうしてそれからしばらく経った後、およそ半分の異世界人達が国へと帰ることが決まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます