第386話 遊んでいる

「それでそのザグなんだけど……昔私告白されちゃったのよ」

 エルからのカミングアウトに康生と時雨さんはそれぞれ驚いたように声をあげた。

「あっ、でも私は断ったの。でも、それからもザグもアピールが続いてきて。でもお父様のことがあったら、結局そのまま会わなくなって。だから私はちょっとだけ気まずい……」

 若干恥ずかしがるように顔を赤く染めながらエルは語る。

「そうだったんだ……」

 その話を聞いた康生は、どういうわけか少しだけ胸がざわざわすることに戸惑っているようだった。

「えぇ、ですから私としてはあまりお嬢様とザグを引き合わせるのはいい気がしません。まぁ、とはいえ向こうが侵入してきているというのならば対応は違ってくるでしょうけど」

 リナさんはそう言って少しザグに敵対心のような感情をぶつけるように言う。

 どうやらエルを大事にしているだけに、そういう話はあまり好きではない様子だった。

「まぁ、その話はさておき俺はとにかく奈々枝を連れ戻しに行ってきます」

 話が一段落ついたからか、上代琉生がザグと遊んでいるという奈々枝を連れて帰ろうとする。

 奈々枝は曲がりなりにも上代琉生の部隊の副隊長を務めているのだ。

 おそらく上代琉生でないと言うことを聞かないのだろう。

「あぁ、よろしく頼む。それとちゃんと監視はつけているのだろうな?」

「勿論ですよ」

 リナさんが心配するまでもなく、上代琉生はザグに対してしっかりと監視をつけている。

 だからこそ今まで放置してきていたのだ。

「ザグのことはこれからどうするつもりなんだ?」

「とりあえず俺は放置でいいと思います。英雄様の知っての通り、奴は悪い奴ではないようなので」

 康生はザグの対処について考えているようだったが、上代琉生は放置という選択肢を提示した。

 それを聞いて流石に危ないのではと反論しようとした康生だったが、ザグの性格を考えるに無関係な人間を殺す奴ではないという結論に至ったようだ。

「私はそのザグについて知らないからな。皆の意見にあわせるよ」

 唯一時雨さんだけザグについての情報が全くない中、皆に意向をあわせる。

「監視があるなら私は別に構わない」

「わ、私もそれで」

 リナさんエルの意見も出たところで上代琉生は満足した様子で部屋を出て行く。

「それじゃあ俺は俺のやるべきことをするんで、皆さんもどうぞ頑張ってください」

 上代琉生はそれだけ言って、ザグと遊んでいる奈々枝の元にすぐに向かうのだった。

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