第385話 カミングアウト
「何っ?奈々枝がザグと交流しているだと?」
奈々枝がザグと共に遊んでいるという情報が上代琉生の元に入ってきたのはちょうどリリスとの通話が終わった後だった。
「ザグ?どうしてここでそいつの名前が……」
病室で報告された内容に、康生は当然すぐに反応を示す。
「あぁ、皆には一つ言い忘れていたことがあった」
と上代琉生は一度皆を見渡しながら口を開く。
「実は異世界から帰る最中、異世界人が一人ついてきたんだ」
「何っ!?」
その情報に真っ先に反応したのはリナさんだった。
「って、もしかしてその異世界人って……」
と続いて康生が先ほどの報告の内容から答えを導きだす。
「あぁ、ついて来たのはザグという異世界人だ。向こうでそいつのことを調べたが、害はないと判断し、そのまま俺達を尾行させた」
上代琉生から伝えられた事実に皆思い思いの反応を示す。
康生は若干驚きながらも、上代琉生の言葉に納得を示し、時雨さんは誰か分からないが、それでも上代琉生がそこまでいうのならばと、安心しているようだった。
しかし残りの二人、エルとリナさんだけは違った。
「ザグってもしかしてあのザグのことっ!?あの筋肉バカのザグ!?」
エルは上代琉生につかみかかるような勢いで尋ねる。
「あ、あぁ。多分そのザグで合ってると思いますよ?」
「そんな……まさか奴がここに来ているとは……」
すると今度はリナさんが大きなため息と共に、なにやら突然頭を押さえる。
「二人共ザグのこと知ってるの?」
そんな二人の反応に思わず康生が尋ねる。
「ま、まぁちょっとね」
エルは少しだけぎこちない返事で答える。
「そもそもどうして貴様がザグのことを……。いや、貴様はそういえば奴と戦ったのだな」
「は、はい……」
康生が大会に出たことはすでにリリスから聞いていた。
だからこそ、そこで出会ったのだとリナさんはすぐに気づく。
「お二人共一体どうしたんですか?」
流石に二人の反応が変だと思ったのだろう、上代琉生は恐る恐るといったように尋ねると、エルは少しだけ悩むような動きをみせる。
「う〜ん……どうしたっていうか、ザグは子供の頃に何度か世話になったりしたのよ」
「へぇ〜、そうなんだ」
エルとザグが繋がっていたことを知り、康生は意外そうな顔をする。
「元々ザグがいる国の王と、我々の元王の仲は良かったのだ。だがあの事件があった以降、二人は会うことはなくなったんだ」
リナさんが補足するように付け加える。
「それでそのザグなんだけど……昔私告白されちゃったのよ」
「「えっ!?」」
エルのいきなりのカミングアウトに康生は勿論のこと、時雨さんまでも大きな声を出して驚くのだった。
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