第380話 進める
「新国王様っ!そろそろお時間ですよっ!」
「あぁ、分かった」
乱暴に開けられた扉から、急ぐようにメルンが入ってくる。
「全く!そんなんじゃリリス様の後任としてやっていけませんよっ!」
「あぁ、分かっているとも」
メルンにぐちぐちと小言を言われながらも国王は一切表情を変えずに涼しい表情で立ち上がる。
「準備はもうすでに出来ているな?」
「当たり前ですよっ。全く……どうして私があなたの護衛役にならないといけないんですか……」
メルンは国王の後ろをついて歩きながら大きくため息をもらす。
「まぁ、君は魔力暴走の少女をとめた功績があるからね。きっとそれをリリスは利用したんだろうよ」
「リリス様ですよ!勘違いしているようですけど、私が忠誠を誓っているのはリリス様だけですからねっ!」
国王の言葉にメルンは反発するようにがみがみとうるさく騒ぐ。
対する国王はそんなメルンの言動に対して特別何か言うわけでもなく、ただ涼しい表情で流している。
「だけど、あまり城内でその話はしない方がいいよ?」
「分かってますよ」
小声で国王に注意されたメルンは少しだけバツの悪いような表情になる。
「まぁ、どのみち私がここに残ったのは魔道具研究のためですから、新国王様に使う労力は全くないですからね」
「あぁ、それは分かってるさ」
国王様と呼んでいるわりに雑多な扱いなメルンだが、やはり何も言われることはなかった。
そうして二人は慌ただしく城内を歩いていくのだった。
『メルンを残してきた?』
リリスからメルンを城内に残してきたという話を聞いた康生は驚くように声をあげた。
「あぁ、そうじゃ。奴は自身の研究があるからな。そう簡単には連れ出せないんじゃよ」
『そうか……』
康生はメルンの研究所での様子を思い出しながら、納得する。
「それに次の国王はメルンの兄じゃから、あいつが国にいて害を与えられることはまずないじゃろう」
『兄さんが……』
康生は前々からメルンに兄がいることを知っていたが顔を合わす機会がなかったので話したことはない。
だが、メルン同様に優秀な頭脳を持っていると以前リリスから言われたことを康生は思い出す。
『なるほどな、だから情報には困らないと』
「あぁ、その通りじゃ。通信手段はすでにメルンが作ってくれた。現状、ほかの国の者達はまだ我らの居場所をつかめてないという。じゃから安心してくれ」
それを聞いて康生達はわずかに安心したようで、そっと肩をおろす。
『それで今後のことなんだが……』
そうして上代琉生はリリス達と共に今後についての話し合いを進めるのだった。
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