第379話 笑み

「リリス様っ!大変ですっ!」

 異世界のとある秘境の地。

 そこで新たな生活を迎えることになったリリス達一向は、自らの住むべき場所を作るため作業をしていた。

 といっても、人間のように1から資材を集め、土台を作り、そこから家を作るのではない。

 異世界人達は魔法を使い、材料を一切使わずに建物を建設していた。

 そんな中、リリスの元に護衛の一人で大慌てでやってくる。

「一体どうしたんじゃ?」

 慌てようを見て、すぐに何かを察したリリスは一瞬のうちに険悪な表情になる。

「そ、それがリリス様から預かっていたこの魔道具が突然光だしまして……」

「なんじゃ……そんなことか……」

 護衛の報告を聞いて、リリスはすぐにがっくりと肩をおろす。

 どうやら色々と身構えていたようだったが、いらぬ心配になってしまったということだ。

「分かった。我は少しだけ席をはずす、何かあればお主等が対処しろ」

 リリスはすぐに護衛から魔道具を受け取ると、人影に隠れるように歩き出す。

「あぁじゃが、もし本当に何か大変なことがあれば、すぐに報告するのじゃよ」

 リリスは最後にそれだけ言って歩き去っていった。




「もしもしっ。康生はどうなったっ?」

 人影に隠れたリリスはすぐに魔道具――上代琉生から預かった携帯電話を開いた。

『……も、もしもし。その節は色々と迷惑をかけました』

「康生かっ!?」

 その声を聞いた瞬間、リリスは驚くように声をあげる。

『は、はい。おかげさまで無事目を覚ますことが出来ました』

「それはよかった……」

 康生の無事を確認したリリスは全身から力が抜けたかのようにその場にへたりこむ。

 どうやら康生の安否をよっぽど心配していたようだ。

『すいません。俺、大事な時に倒れてしまって……』

「いや、何気にするな。どのみちあの娘を止めることは出来なかった。我は康生が無事じゃっただけで満足じゃ」

『そう言ってもらえるとありがたいです……』

 実際あの時には、康生が死ななければあれは止まらなかっただろう。

 だからこそ仕方のないこととリリスは割り切っているようだった。

『そっちは今どんな感じですか?』

「あぁ、こっちか……」

 そうしてリリスは現在の状況を康生達に知らせるのだった。




『じゃあしばらくは安心出来そうですね』

「まぁ、あまり気を抜きすぎるのはよくないがな」

 あらかた事情を説明し終わると、今度は康生が安心するかのようにそっと息をはいた。

『まぁ、しばらくの間は大丈夫だろう。他の国の動きが少しだけ心配だがな』

 すると今度は康生から代わって上代琉生が電話にでてくる。

「その点については何も心配はいらぬ。外の情報を効率よく得るためにいくらか策はうってあるからな」

 そう言ってリリスは笑みを浮かべて言うのだった。

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