第371話 人間界
「我々はここまでだな」
「あぁ、すまないがここからは一人で頑張ってくれ」
リリスの護衛をしていた二人は、立ち止まって言った。
どうやら護衛の二人はここまでしかついていけないようだった。
「むしろここまで来てくれて助かったよ」
上代琉生は軽く頭を下げた。
「あっちについたら一度リリスに連絡をあげると言っておいてくれ」
「承知した」
どうやら上代琉生はリリスに康生のスマホを預けていたようだ。
恐らくそれを使ってもう一度連絡をとるのだろう。
「上王様が大変な中、わざわざ着いてきてくれてありがとうな。また、何かあったら全力で助けになるよ」
「むしろ感謝しているのはこちらだ」
護衛の二人はそんな上代琉生の感謝に首を横に振る。
「上王様は、父の夢を叶えようとしていた」
「だからこそこのような結果になって本当によかったと思っている」
後から聞いた話だが、どうやら護衛の二人はリリスの前の国王にも仕えていたようだった。
だからこそ、前国王である夢をリリス達が叶えようとしていることをひどく喜んでいるのだろう。
「それはお互い様だよ」
上代琉生はそれだけ言って背を向ける。
「あぁ、それと」
足を踏みだそうとする上代琉生だったが、寸前のところで踏みとどまり顔を護衛の二人に向ける。
「あいつについてはどうするつもりなんだ?」
突然あいつと呼ばれ、護衛の二人は戸惑うかと思われたが、それについて何も反応を示さずにゆっくりと答える。
「あれはこのまま見逃すとのことだ」
「上王様にそう言われたからな」
「そっか、ならいいか」
上代琉生はそれだけ聞くと、今度こそ本当に足を進める。
上代琉生の姿が完全に見えなくなると、護衛の二人はゆっくりと背後を振り返る。
「後のことは頼んだぞザグ殿っ!」
「あぁっ?」
突如何もない空間に話しかけたかと思えば、突然影からザグの姿が現れたのだ。
「なるほどな、俺の尾行がバレてたってことか」
ザグは尾行がバレていたことに大して驚いた様子もなく、潔く出てきたようだった。
「当たり前だよ」
「俺達はこれでも王に仕える護衛だからね」
「けっ、それで俺に一体に何を頼むだって?」
護衛の態度に少しばかり悪態をつきながら、先ほどの言葉の真意を尋ねる。
「あの者達はこれから人間界に行く」
「そして君もそれを追って行くのだろう?」
そんな護衛の言葉にザグは僅かに口角をあげる。
「なるほどぉ、人間界か。そりゃ中々面白そうじゃねぇかっ」
どうやら人間界に行くのを楽しみにしているようだった。
「ザグ殿は国王に命令されてあの者達を監視するように言われたのだろ?」
「だからもし何かあった場合は助けてやってほしい」
そんなザグに大して護衛の二人は頭を下げる。
本来ならば敵であるザグに頭を下げるのはおかしいが、リリス達はザグの性格をよく知っていた。
「へっ、当然じゃねぇか!これもあいつが回復するためのことんだろぉ?俺と戦うまでに死なれたら困るからよぉ!」
とザグは高らかに宣言した後、康生を追って人間界に行くのだった。
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