第369話 安否
「リリス様どういうことですかっ!?」
リリスの部屋で大声が鳴り響く。
さきほど、血相を変えたメルンがリリスの元へとやってきたのだった。
「どういうことと言われてもな…、そういうことだとしか言えぬ」
しかしリリスはそんなメルンとは反対に、至って冷静に取り繕う。
「昨晩、上代琉生と相談して決めた。これはもう決定事項じゃ」
「そんな……」
メルンはリリスの言葉を聞いて、分かっていたことだがそれでも落ち込む。
「どうして……、どうして急に上王をやめることになったんですかっ!?」
そう。リリスは上王を辞めることになったのだ。
それも昨晩、上代琉生と話し合って決められたことだ。
「これは全て我の夢のためじゃ。その為には上王のままではいられないんじゃ」
「そんな……」
リリスはメルンに言い聞かせるように言う。
「じゃが、後任の奴らは既に信用のある奴に任せてある。そやつは我を気に入らない連中にも好かれておるから大丈夫じゃろう」
「でも……」
いくらリリスが説明しようが、やはりメルンは不安な様子だった。
「でも、いくらなんでも急すぎますよ……。それにまさか康生さんのことまでバラすなんて……」
「まぁ、確かにあれは少し申し訳ないことをしたと思っている」
とリリスは少しだけ表情を曇らせた。
二人が話している康生の事というのは、康生が人間であると宣言したことだ。
それだけでも衝撃的だが、それよりももっと衝撃を呼んだのがリリスが上王を辞めることであり、そしてその次の宣言だった。
「上代琉生の考えって言ってましたけど、まさか人間達と仲良く暮らそうとしている異世界人を集めているなんて思ってませんでしたよ……。しかもその者達で新たな国を作るなんて……」
そう。上代琉生はリリスに上王を辞めさせると共に、人間に対して友好的な思想を持っている異世界人達を集めて国わ作るように提案したのだ。
当然その国の王はリリスである。
「そうじゃな。確かに前父と同じような思想を持っている者もこの国にはいただろうが、こんな短期間で見つけだすとはな……」
リリスも上代琉生の行動力にもはや、驚きを通して尊敬の念すら覚えているようだ。
「じゃが、これから忙しくなる。メルンも当然我に着いてきてくれるな?」
「勿論ですよっ!」
初めは不安そうなメルンだったが、リリスの生き生きした表情をみたメルンはそんな不安などなくなってしまったようだった。
そうしてリリス達は新たな国を建設すべく動き出すのだった。
(そろそろ康生達も無事脱出に出来たじゃろうな……)
リリスは新たな一歩を踏み出すと同時に、異世界から脱出した康生達の安否を祈るのだった。
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