第366話 テーブル
「ふぅ……」
上代琉生が一人ため息をこぼしながらもベッドの上へ寝ころぶ。
日々の疲れからか、いつもの様子とは違い少し緩い雰囲気をまとっていた。
それほどまで上代琉生が疲れているの原因は一つだ。
現在、異世界へと来た上代琉生は康生を逃がすために必死に作戦を考えている。
異世界に来てから早数日、自身の部屋も用意してもらった上代琉生は一日のやることを終え、就寝の準備に入っているのだ。
上代琉生が異世界に来てから数日間、とにかくメルンやリリスから積極的に異世界の情報を仕入れてきた。
さらには今や上代琉生は異世界に来てたったの一日で既に皆から仲間だと思われるよう工作も施した。
結果、リリスが懸念していた異世界での生活にはついては何の問題もなく過ごせている状態だった。
そうして自由に動けるようになった分、上代琉生はひたすらにここから脱出する方法を考えている。
リリスやメルン達から情報は今日でようやく一通りもらった。
だからこそ後はその情報を元にここからの脱出作戦を考えなければならないのだが、上代琉生は今日はひとまず休息をとろうとしている様子だ。
地下都市の方も後継を残してきたとしても、やはり懸念すべき点はいくらでもある。
だからこそすぐに出も脱出しなければいけないが、そのためにも上代琉生は休息をしっかりととるのだ。
「……とにかく明日からは独自行動だな」
頭の中でぼんやりと明日の行動を思い浮かべながら上代琉生は眠りにつくのだった。
「なんというか、すごいですね。あの上代琉生って人は」
「そうじゃな」
場所を移ってここはリリス達の食事場。
リリスとメルンが向かい合う形で夕食をとっている最中だった。
その中で二人は上代琉生の行動について話していた。
「一番の驚きはあれですよ。まさかほんの一日で城内の皆と話せるようになるなんて、こんなのよっぽどですよ」
「そうじゃな。いきなり現れたくせに奴はその立場を利用して色んな顔を使って取り入ったようじゃ」
どうやら二人の上代琉生のすごさに感服しているようだった。
「これはもしかすると本当に康生さんを逃がせるかもしれませんね」
「……そうじゃな」
上代琉生の実績を見たメルンは少しだけ明るい声で期待するように言う。
だがリリスはそんなメルンの言葉にわずかながらに表情を暗くする。
「どうしたんですか?」
そんなリリスの表情に気づいたメルンはすぐに首を傾げて尋ねる。
「いや……なに。少しこれから先の未来について考えててな」
リリスはそっと食器をテーブルに置き、何か考えるようにそっと目を閉じたのだった。
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