第364話 3人

「本当に大丈夫かな……」

 背後では次元の歪みのようなものが消滅していく中、エルは小さく呟くのだった。

「こうなった以上はもう上代琉生を信じるしかない」

 そんなエルの背中を押すように時雨さんが答える。

「うん。そうだね」

 エルも上代琉生のことを信用していないわけではない。

 だからこそ、上代琉生一人で異世界に行かせ、康生のことをお願いしたのだ。

 心配こそせぞ、不安になる必要はないのだ。

「きっとあいつなら大丈夫さ」

 そして最後に、リナさんがそっと呟く。

「リナにしてはなんだか、ちょっと以外だな。あぁまでして上代琉生のことをかばうなんて」

 リナさんの発言に対して、時雨さんは少しだけ興味をもった視線を向ける。

「別に変な意味はない。ただ、あいつは一度やると言ったことはやり遂げる男だと信じているだけだ」

 それに対してリナさんは特に何か反応を示すわけでもなく素っ気なく答える。

「そう、その点は康生も一緒。だから絶対に帰ってくるって信じないと」

 対してエルは、リナさんの発言を聞いて前向きな発言をする。

「まぁ、確かにそうだな」

 時雨さんもそんな二人に合わせるように頷いた。

「それよりも私が気になったのは、あいつが後継だと言った存在のことだ」

「確かにそれは気になるね……」

「そうだな」

 リナさんがふと漏らした言葉に、エルと時雨さんは同じように考え込むような表情になる。

 実はエル達は上代琉生と別れる前にこんな言葉を聞いていたのだ。


「向こうに着いたら俺の部隊は全て俺の後継に任せる。だからそれの言うことは俺の意見だと思ってくれて構わない」


 上代琉生が自らの部隊を率いる後継を作っていたことに皆は驚きつつも、それ以上に上代琉生が自分の代わりとまで言ったその人物に対して興味津々のようだ。

 上代琉生にそこまで言わせるほどの人物が部隊の中にいたのかと、三人は先ほどから考え込んでいるようだった。

「とにかくまずはその後継とやらに合流した方がよさそうだな」

 だがいくら考えても一向に出てこなかったからか、時雨さんはすぐに諦めるように言葉をもらした。

 それに対して二人も同意見のようで、時雨さんと共に上代琉生の部隊の元へと足を進めようとしていた。


「おっと!そちらから来なくても大丈夫ですよっ!」


 突然声が響いたかと思うと、エル達がいる部屋に一人の人物が入ってきた。

「私、隊長上代琉生の後継をやることになった上代奈々枝ですっ!」

 そんな元気な声と共に、活発な笑みを浮かべる一人の少女――上代琉生の後継が三人の前に姿を現したのだった。

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