第359話 本題

「リリス様っ!」

 リリスが書類に目を通していると突然、扉が乱暴に開かれた。

「どうしたのじゃっ!」

 突然扉が開かれたことに驚きつつも、リリスはすぐに急用なのだと判断しすぐに応答する。

 しかも相手がメルンなのだから、尚更リリスは作業中断するのだった。

「これを見てくださいっ!康生さんが持っていた機械なんですけどっ……」

 そう言ってメルンが手に持っていた四角い機械――スマホをリリスに手渡す。

「これは確か……」

 リリスは地下都市の中で、康生達がこれを使っていたことを思いだす。

「それでこれがどうしたのじゃ?」

 だがそれだからといって、別に何か変なことはない。

 このスマホを持って慌てて来たのだから何かあるのだということを思いながらもリリスは尋ねる。

「それがですね、先ほどこの機械が急に光はじめまして。もしかしたら何か緊急のものかもしれないので、リリス様のところに持ってきました!」

「光った?」

 その言葉を聞いてリリスはもしやと思いスマホの電源を入れる。

「リリス様はこの機械の使い方を知ってるんですかっ?」

 リリスがボタンを押すことで、スマホの電源がついたのを見たメルンが驚いたように言う。

「いや。我は別にこの機械の使い方を知っているわけではない。じゃが、康生が何かあった時のために使い方を教えてくれたんじゃ」

 そういいながらリリスはスマホの画面に出てきた通知をタップする。

 すると専用のアプリが立ち上がり、リリスとメルンは初めてみるそれに驚きながらも黙って見続ける。

「それでこれは一体……」

 とそこまでメルンが言ったところで、突然部屋の中に声が響く。


『あっ!やっと繋がった!!』


 スマホの中から響いた声はエルのものだった。

「えっ!ええっ!?」

 突然スマホからエルの声が聞こえたことにメルンは驚きの声をあげる。

 リリスもまた驚いているが、少しは康生から話を聞いていたのか、驚きながらも表情に出すことはなかった。

『聞こえてるリリス?』

「あ、あぁ聞こえておるぞ」

 それでも恐る恐る、といった感じでリリスはスマホの中のエルに話しかける。

『よかった……。もしかしたら繋がらないかと思って焦ったんだから』

 だがそんなリリスの反面、エルはいつもと変わらぬ様子で普通にしゃべりかけてくる。

「エ、エルお嬢様がどうしてっ……!?」

 するとしばららく二人の会話を聞いていたメルンが、遅れて声をあげる。

『あっ、その声はもしかしてメルンっ?』

「そ、そうですっ!私ですっ!メルンですっ!」

 エルから声が返ってきたことで、若干メルンは興奮した様子でスマホにかじりつく。

「ま、待て!今は仲良く話をしている場合じゃないっ!」

 しかしそんなメルンからリリスはスマホを遠ざける。

「エル!我は康生からこの通信は緊急用だと聞いている!もしかしてそっちで何かあったのかっ!」

 とリリスが無理矢理に本題に入ろうと話しを進めるのだった。

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