第357話 電源

「――このままいけば、中央都市は間違いなくこちらに攻め行ってくる」

 地下都市の中央にある会議室。

 そこでは今日もまた、上代琉生の情報を元に会議が開かれていた。

「なんとか交渉は出来ないの?」

「無理でしょうね。奴らは我々を殺すことしか考えてない」

 エルの言葉に上代琉生はすぐに返事を返す。

 誰もその言葉に反論しないのだから、恐らくそれはこの場の皆が共通して思っていることだろう。

 そしてそれ以上は特に新しい意見も出ることなく、ただただ時間が流れていくだけだった。


「――やはり助けを求めた方がいいんではないだろうか?康生に」


 そんな中、重苦しい空気の中で沈黙を破るように時雨さんが呟く。

「もはやこれは我々だけでは対処が出来ないんだろう?それにどんな手を使っても戦闘になってしまう。だからこそ早い段階から康生を呼んでいた方がいいんじゃないだろうか?」

 時雨さんの発言に対して、その場の皆はそれぞれの反応をする。

 中でも一番強い反応を示したのは、

「でも、康生は今頑張って力をつけようとしているんだよ?そんな中、呼び戻したりしたら……康生の覚悟を有耶無耶にしちゃう」

 本当はエルだって康生に会いたいのに、それなのに人一番我慢している。

 だからこそエルは康生が自分から戻ってくることを信じているので、時雨さんの意見には否定的だった。

「正直私のエル様の意見に賛成だ」

 続いてリナさんも同じくエルの意見に賛同する。

「だが、現状これから先康生の力が必要な時が必ず出てくる」

 しかしすぐに時雨さんの意見に賛成するように言う。

「まぁ、確かにそうなる可能性が高いですね」

 リナさんの後に続いて上代琉生もまた同じように賛同する。

「確かにこちら助けを求めるのは抵抗があるかもしれないが、現状康生の力が必要なのは明白だ。それに康生のことを考えるあまりに、我々が死んでいたらきっと康生は悔やんでも悔やみきれなくなる」

「…………」

 上代琉生の言葉にエルは何も言い返すことが出来ずにただ黙って考えているようだ。

 皆はそんなエルを待つように、誰もしゃべることなくじっと待つ。

「……確かにそうかもしれない。でも私は出来る限り康生の為になるように動きたい」

「それは分かってますよ」

 エルの言葉に上代琉生は答え、その場の一同も皆頭を頷かせる。

「それじゃあ意見がまとまったということで、早速康生に連絡をとりましょうか」

 そう言って上代琉生はスマホを取り出した。

「康生はあちらにいるのだぞ?そんなところと連絡が取り合えるのか?」

 上代琉生が取り出したスマホを見て、リナさんは不審がるように尋ねる。

「こういう時のために、康生と相談して作っておいたんですよ。まぁ、エネルギーがかかり過ぎて、使えるのは数回程度でしょうけど」

 そう言いながら上代琉生はスマホの電源を入れるのだった。

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