第350話 実行
「おらおらおらおらおらぁっ!」
ザグはひたすらに雄叫びをあげながらシロに対して攻撃を行う。
だがシロもザグに対して猛攻撃を仕掛けてきており、攻撃をするチャンスが少なくなっていた。
(ちっ!俺はこの程度なんかじゃねぇぞっ!)
しかしその状況が、ザグをより一層燃え上がらせる。
康生との戦いで見せたように、一瞬のうちに近づき攻撃を加えるスタイルは変わらないものの、確実に攻撃を入れられるよう隙を見つけて瞬時に突撃する。
まさに精練された動きでシロを追いつめていく。
「……っ」
やがてシロもザグに注意を払うようになり、攻撃がさらに激しくなる。
「おらおらおぉっ!俺はこんなもんじゃやられねぇぞっ!」
青い炎の猛攻撃をひたすらに避け続けるザグ。
それは寸分の狂いがあれば確実に死んでいるであろう間合い。
それでもザグは恐れることなくシロに立ち向かう。
全ては囮としての役割を全うするためだ。
「おらぁっ!」
そんな思いの元、ザグはさらにシロに対して攻撃を仕掛けるのだった。
「…………」
シロとザグの戦いからわずかに離れた位置で、康生はひたすら静かに2人の戦いを見守っていた。
ザグが傷つきながらもシロに向かっていくのを見て感情を動かされることなく、ただただシロの隙が来るまでじっと静かに息を潜める。
(確実に、とどめをさせるように……)
康生はひたすらに頭を冷静に働かせて、シロの隙を待つ。
それと同時に、シロを倒す算段を頭の中にイメージさせながら、いつでも攻撃が出来るようにしていた。
「…………」
心を無にする。
それがリリスから教わったことだ。
そうすることでより魔力を引き出し、強力な魔法を放つことが出来る。
だからこそ康生は全身全霊をかけて心を落ち着かせていた。
「おらぁっ!」
時折ザグの声が聞こえるが、それでも康生はザグの存在を無視し、シロの動きだけを冷静に観察する。
(あと少し……あと少しで…………)
だんだんと動きが荒くなるシロを見ながら康生はひっそりと攻撃の準備を始める。
すでに脳内ではシロを倒すイメージは出来ている。
あとはそれを実行に移すだけ。
「ふぅ……」
康生の勘が、もうすぐで大きな隙が出来る。
そう囁いている。
だからこそ、より心を落ち着かせながら体勢を整える。
「おらぁっ!死ねやぁっ!」
「……っ!」
その時、ザグがシロに対してダメージを与える。
だが攻撃に集中し過ぎたせいか、ザグに大きな隙が出来た。
シロは当然その隙を見逃さないと攻撃を加えようとするが、
(今だ)
シロの大きな隙を見つけ康生はいよいよ実行に移るのだった。
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