第348話 役

「まずはダメージ力……」

 シロの猛攻撃をひたすらに避けながら康生は呟く。

 そして次の瞬間『解放』の力で康生は一気にシロまでの距離をつめる。

「っ!!」

 シロは突然現れた康生に戸惑いつつも青い炎でガードを作る。

 それはまるでシロの意識とは別に、無意識に動いているようにも見えた。

「はっ!」

 しかし康生はそんなもの気にせずにグローブで攻撃を加える。

 青い炎には触れず、そのギリギリの場所で拳を止めて。

 『解放』の力を全力で使っている。

 だからこそ相当なダメージが入ると康生は期待しているが、


「うっ……!」


 一気に距離とった康生が背後を振り返ると、シロが腹を抑えるようにしてうずくまっていた。

「よしっ!」

 その様子からは相当なダメージが入ったはずだ。

 だが全力の攻撃でその程度しかダメージが入らないことを知った康生はさらなる作戦を頭の中に浮かべる。

「…………っ」

 そうしている間にシロは康生、そして今度はザグもその視界に入れながら警戒態勢をとっていた。

 今までのようにひたすら猛攻撃を繰り返すのではなく、ただ期を待っている。そんな感じだった。

「おい、どうするよ。このまま長引けば俺は、魔力切れで地上に降りちまうぜ?」

 シロの猛攻撃が止まったことにより、ザグが康生の元へと近づいてくる。

「それは俺も同じだ。だから早くケリをつけたい。だが……」

 そう言ったところで康生はシロの方に視線をやる。

 シロはダメージこそ受けたものの、致命傷にはなっていなかったようだ。

 それでも確実に傷は負っており、口から血が一筋流れ出ていた。

 しかしそれのせいもあり、シロは現在警戒態勢をとっている。

 だが問題なのは、今の攻撃が『解放』の力の最大出力だ。

 それであれだけの傷しか負わせることは出来ないということは、決定打に欠けるということだ。

 だから何か、このチャンスを広げられるアイデアがないかと康生は思考を巡らせている。

「今度は腹じゃなく顔を狙ってみたらどうなんだ?」

 思考康生を見て、ザグもまた意見を言う。

「それも考えたが……、多分それを実行しようとすると必ずあの青い炎の防御を厚くしてくる。だから確実に隙をついてやるしかないが……」

 隙を作る方法が思いつかないでいた。

 あの青い塊は先ほどの攻撃で見たように半ば自動的に働いている。シロの意志とは関係なく守ろうとするから、いくらシロの隙をついても守られてしまう可能性が大なのだ。

 だからこそ康生は何か確実に攻撃を入れる方法を考えているが……、

「ちっ、仕方ねぇがその役、俺が引き受けてやる」

 そう言うと、ザグが拳を構えるのだった。

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