第347話 打破

「だから俺を無視するじゃねぇよっ!!」

 ザグの声と共にシロの猛攻撃が止まる。

 何事かと、康生が視線を向けると全身を青い鎧で包んでいたシロが腕を抑えていた。

(一体どうやって……?)

 それを見た瞬間、康生の頭の中で様々な疑問が浮かび上がる。

 どうして青い鎧を貫通してダメージを与えることが出来たのか、どうしてザグが空中に浮いているのか、そしてどうして攻撃をしたはずのザグは青い炎のダメージを受けてないのか。

 とにかく様々な疑問を浮かんでいた。

「おいっ!ぼけっとすんじゃねぇよっ!」

 そんな中、ザグの声を聞き康生はハッとする。

 その瞬間、シロが体勢を立て直してすかさず攻撃を繰り出してくる。

「あぶっ!」

 康生はシロの攻撃を寸前のところで回避する。

「隙だらけだぞっ!少しは気をつけろっ!」

 ザグのからの叱責を受けた康生は、ふたたびシロの猛攻撃に対して回避行動をとり続ける。

「お前どうして空にっ!?」

 こちらも反対方向で回避し続けているザグに、康生は声をあげて尋ねる。

「これはお前のとこの嬢ちゃんに作ってもらったんだよっ!元々の魔道具を勝手に改造しやがってなっ!」

 そう言うとザグは再びシロの攻撃を避ける。

 よくよく見ると、ザグは足につけている魔道具から風を操って空中移動しているようだ。

 元々、風を出して瞬時に移動するだけの魔道具だったものをメルンが少しの間で改造したのだろう。

 改めてメルンの技術のすごさを康生は実感した。

 だが最大の疑問がまだ一つ、

「お前っ、さっきどうしてシロにダメージを与えられたっ!?」

 そう。攻撃の瞬間は見ていなかった康生だが、シロは確実にザグの攻撃でダメージを受けていた。

「あぁっ?そんなもん簡単なことだよっ!拳で攻撃したんだよ、拳で!」

「拳っ……?」

 だがそれだと青い炎のダメージを受けてしまうはずだが、ザグの腕にはそれといったダメージがなかった。

 一体何を言っているのかと、必死に攻撃を避けながら考えているとザグが再びシロに向かって近づいていく。

「死ねやくそぉっ!」

 ザグがシロの背中に向かって拳を振り下ろす。

「っ……!」

 するとシロはまたもやダメージを受けたようで、苦い表情を浮かべていた。

「ちっ!これでもダメかっ!」

 そしてザグは再び猛攻撃を仕掛けてくるシロから距離をとる。

「今のは……」

 一連の流れを観察していた康生は、思考を回転させる。

 ザグはたった今、シロに向かって拳を振り下ろしていた。――だが、その拳はシロには命中していなかった。

 つまりそれが意味することとは……、

「拳圧……?」

「あぁそうだ!その通りだっ!」

 康生が正解に導くと、ザグは自信満々の表情で返す。

(そうか、拳圧。拳圧か……)

 そうして、ザグからシロに攻撃を与える手段を与えられた康生は、すぐさまシロを打破すべき作戦を組み込んでいった。

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