第344話 戦闘準備

「…………」

 空中から降りてきたシロは何も言わずにただ康生を見つめる。

 すぐに攻撃でも仕掛けてくるかと思ったが、シロはただじっと見つめてくるだけだった。

「おいおいおい」

 そんな中、ザグが一人で歩き出す。

「お前俺様を無視するとは一体どういうことだ?それに言ったよな?俺はお前に……」

 康生にしか目が言っていないことに怒ったのだろう。

 ザグはまるで自分の存在をアピールするかのようにシロに向かって足を進めていたのだが、

「くっ!」

 その瞬間、シロの周りに浮いていたい青い玉がザグめがけて飛んでくる。

 ザグは咄嗟にそれを回避するが、その青い玉は軌道を変えてザグを攻撃してくる。

「うぜぇな!おいっ!」

 幾度も軌道を変えて迫ってくる青い玉にだんだんとザグはいらいらしたようで、避けるばかりではなくて撃退しようと拳を構える。

「待て、ザグっ!」

 しかし嫌な予感がした康生は咄嗟にザグを止める。

「うっせぇっ!」

 だがザグは康生の忠告を聞かずに青い玉に向かって拳をぶつける。

 その瞬間、

「あっちぃっ!!」

 ザグが触れた青い玉が青白い光を放ち始めた。

 かと思えば、ザグは拳を押さえるようにして咄嗟に青い玉から距離をとる。

「やっぱりか……」

 その反応を見た康生は嫌な予感が的中したことに、嫌気がさしながらザグのそばへと行く。

「あの玉は恐らく全て青い炎の力が宿っているみたいだ。だから容易に触れようとするなよ」

「ちっ、わぁったよ」

 康生に忠告されたのが少しだけ気にくわないようだったが、そこは素直に忠告を聞き入れる。

 そうして再びザグと康生はシロと向き直る。

「メルンごめんっ!やっぱりこいつは俺を狙っているみたいだ!だから、俺はここでくい止めておくからメルンは早く避難を!」

「俺達だけどなっ!」

 康生のあとにザグも声をあげる。

 やはりザグもまた、康生と共にシロと戦おうとしているのだ。

「そんなっ!危険過ぎますっ!」

 しかしメルンは2人の心配をして、それを聞き入れようとはしなかった。

「大丈夫だ。観客がいなくなった以上『解放』の力が使える。それにもしやばくなったその力ですぐに逃げればいいだけだ」

 そう言って康生は『解放』の力の準備を始める。

「けっ、その力は俺との戦いで暴きたかったのによ」

 康生が戦闘体勢に入ったことで、ザグもまた拳を構える。

「……全く仕方ありませんね」

 すると2人に合わせて、メルンはなにやら懐から色々と道具を取り出す。

「私は上王様に2人を避難させるように言われたんです。だから2人が避難するまで、私も手伝いますよっ!」

 そう言ってメルンは魔道具を構えて戦闘準備を始めるのだった。

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