第343話 空中

「なんだあれは……?」

 いつの間にかコロシアムを囲っていた青い炎が消えていたことに気づいた康生はすぐにシロの方へと視線を向ける。

 しかし次の瞬間、シロの姿を見た康生は不可解なものでも見るかのような表情になった。

「恐らくあれは青い炎を圧縮して作ったものだな。それに体内にも取り込んでやがる」

 と康生の声を聞き、ザグがすぐに説明を入れる。

「圧縮……それに取り込む……」

 ザグの言葉を聞いてすらも、康生は頭の中で理解できずにいた。

 それほどまでにシロの姿は、今までのものより変わっていたからだった。

 まず全身を覆うように、青い炎がリング状となって浮いている。

 その周辺にはいくつもの青い玉が浮かんであり、どうやらあれがザグの言った圧縮という奴なのだろう。

 そして一番変わったのはシロ自身の見た目だ。

 髪は青く染まっており、髪の先端が燃えるように揺らいでいる。まるで髪全体が青い炎に浸食されたかのように。

 そして着ていた服は跡形もなくなっており、申し訳程度に体の一部分ごとに青く変色していた。

 瞳も青く、まさに青い炎を吸収したといった意味が遅くながらに理解できるほど、シロの見た目は異彩を放っていた。

「さぁて、現状あれに対処できるのは俺達しかいねぇが、どうするよ?まぁ、お前の場合は決まってるだろうがな」

 ザグはシロの姿を見てもなお、戦う気満々といった様子だった。

 そして康生を見る。

 既に康生がなんて答えるのかを分かってるのにだ。

「――そんなの当然決まってるだろ」

 康生はザグの期待に答えるように言う。

「あれは俺が倒す。元々シロの狙いは俺だったしな」

「当然俺も協力するぜぇ」

 康生が戦う意志を見せると、ザグは楽しそうに笑みを浮かべながらも拳を構える。

 しかしそんな中一人取り残された者は、

「ほ、本気ですかっ!?シロさんは現在魔力暴走を起こしているんですよっ!康生さんは何も知らないと思いますけど、ザグさんは知ってるでしょ!?魔力暴走がいかに危険ということをっ!」

 ただメルンだけが、康生達が戦うのを止めようとする。

「そんなにやばいのか?」

 メルンの以上なまでの反応に康生は少しばかり、尋ねる。

「当たり前ですよっ!現状、この場の空気中の魔力を全て操れると思ってください!しかも敵の魔法は強力な青の炎です!そんなの絶対に……」

 とそこまで言い掛けたところで、遮るように何かが落ちてくる。――否、降ってきた。

「嬢ちゃんはそんなこと言ってるが、向こうもやる気満々のようだぜ?」

 そう言うと同時にザグは視線をメルンから外し、空中から降りてきたシロへと向けるのだった。

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