第341話 残念

「な、なんだぁっ!?」

 コロシアムを囲うように噴出した青い炎に、ザグは大きな声をあげる。

 そんな中。康生は見覚えのある炎を見て、視線をコロシアム中に視線をさまよわせる。

(あの炎はシロの物だ……。ということはどこかにあいつが……)

 そう。あの青い炎は前回の試合で康生と戦ったシロが使っていたもの。

 確かメルンの話では、あの魔法を使えるのはシロだけと言っていた。

 だからこそどこかでシロが操っているのかと思った。

 しかし、

「どこにいもいない……」

 コロシアムを見渡せど、シロの姿を見つけることは出来なかった。

「おいっ!これはお前の技かぁっ!」

 といつの間にか近くに来ていたザグが康生に話かける。

「いいや、これは俺のじゃない。恐らくシロの魔法だ」

「やっぱり、そうか。くそっ、あのやろう。やっぱり懲りてなかったのか」

 試合中ではあるが、突然の出来事に対し2人は戦っている場合ではないと瞬時に判断したようだ。

 そうしてすぐに動けるように、体を整える。

「康生さんっ!ザグさんっ!」

 するとそんな2人の元にメルンが慌てて駆け寄ってくる。

「メルン!これは一体どういうことなんだ?」

「それはまだこちらも把握してません!とにかく今はリリス様をはじめ、各国それぞれが協力しあって外に避難している最中です!なので2人も早く逃げますよっ!」

 どうやらメルンは康生とザグの避難させるためにここまで来たようだ。

 だからこそ、康生もザグもすぐに避難を開始しなければならないのだが、

「おっと、恐らく俺たちが避難すると不味いことになるぜぇ」

「え?それは一体どういう……?」

 ザグの発言にメルンが不思議そうに首を傾げる。

「まぁ、正確には俺じゃなくてエクスだろうがな」

「え?俺?」

 康生もまた、ザグの発言に首を傾げる。

「ほら、あれを見てみろ」

 そう言ってザグは空を指さす。

 一体何事かと、康生とメルンはそれを視線で追うと、

「「あっ!」」

 そこでちょうど2人の声が重なった。

「殺す……殺す……エクス、殺す……っ!」

 その直後。正確には康生がそれと目があった瞬間、小さな声で、それでいてはっきりと声が響いた。

 先ほどまでは何もいなかった空中に――シロが浮かんでいたのだ。

 シロは青い炎と共にゆっくりと空中にあがっていた。

「けっ、やっぱりお目当てはお前かよ」

 康生の隣では、シロの言葉を聞いたザグが、何故か残念がるようにつぶやいたのだった。

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