第337話 畏怖
「おぉっ?お前もだんだんいい表情になってきたじゃねぇかっ!」
猛攻を加える中、康生の表情をみたザグは嬉しそうに口角をつり上げる。
「まぁなっ」
それに答えながら康生はザグの猛攻撃をひたすら回避する。
「へっ!中々おもしろくなってきたじゃねぇかっ!」
そう言うとザグはさらに攻撃のスピードをあげていく。
「あぁっ!」
そして康生はさらに集中して攻撃の軌道を読む。
昔、地下都市で見えない攻撃に苦戦し、AIに頼ることになったが今は違う。
魔法を使用し、風の流れを計算する。そして次の敵が仕掛けてくるポイントを導き出す。
そしてようやく回避の行動に移る。
ただその単純作業を一秒にも満たない時間で康生はやってのけているのだ。
だが、そうやって回避を続けられるのは時間の問題だ。
なにせ高度なことを一度にいっぺんにやっているので、体への負担が大きい。
それを何度も繰り返すとなると、いずれ回避が出来なくなるだろう。
さらには回避に使っている風の力も、すでに残り少なくなっていた。
風の力は移動しながらも溜めることは出来るが、それでもこれだけの量を消費し続ければすぐになくなってしまう。
だからこそ、すぐさま康生は攻撃の一手をしなければならない。
だが、
「おらおらおらっ!避けてばっかじゃ勝てねぇぞっ!」
なにせザグの攻撃が激しすぎる。
ひたすらに打ち出されるその拳は、一度あたれば体に風穴があいてしまいそうなほど攻撃的なものだった。
それが一度に何発もくるのだ。
普通ならば避けることすら出来ない。
それを現状、避けることが出来ているだけでもすごいことなのだ。
しかし、それでは勝てないことは当然康生は知っている。
だから、
「分かってるよっ!」
回避の最中、康生はわずかながらに『解放』の力を発動させる。
「はっ!!」
その瞬間、振り下ろされる拳を避けて、腕めがけて今度は康生が攻撃を加える。
「なっ!?」
ザグの康生の素早い動きに対応が遅れ、その攻撃をもろに食らってしまう。
あれほど『解放』の力を使わないようにしていた康生だが、今回何故使ったのかというと……、
「やっぱり、部分展開は中々きついな……」
そう。康生は『解放』の力を部分的に発動させたのだ。
今回発動させたのは自身の右腕のみ。そうすることで、周りからはただ何があったか分からないように思わせるためだ。
全身で使えば異質な動きだが、腕のみであればばれることはない。康生はそう考えのだ。
「てめぇっ!中々やるじゃねぇかっ!」
「なっ?」
その瞬間、康生は慌ててザグから距離をとる。
腕を攻撃されたザグは体勢を崩すことなく、再度康生に向かって攻撃を仕掛けてきたのだ。
「おいおい……まじかよ……」
解放の力で上乗せしたスピードで殴ったのだ。
当然骨の一本や二本は折れるものだと思っていた康生だったが、ザグは平気な様子で両腕を使って攻撃してくるのを見て、康生はわずかながらに畏怖の念を抱いたのだった。
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