第334話 攻撃

「それではただいまより!武道大会決勝戦を行いたいと思いまーす!!」

 コロシアム中、そして国中に届いてしまいそうなほどの大きな声で決勝戦の開始が宣言される。

 リングには康生。そして例の異世界人の男が向かい合って立っていた。

「よぉ。傷の具合はどうだ?」

「ぼちぼちだよ。それより俺の心配をしている余裕があるのか?」

 康生の容態を心配してきた男に、すぐさま言葉を返す。

「へっ。心配なんてしてねぇよ。ただ俺は全力のお前と戦いたいだけだよっ」

 そういうと男は獰猛な笑みを浮かべて拳を構える。

 この男の今までの試合をしっかりと見てきた康生は、すぐに頭の中たてた作戦を思い出す。

「決勝戦に進んできた選手は、エクス!それに対するのはザグだ!両者これまでの試合で数々の奮闘を見せてきた!さぁ!果たして、この試合どちらが勝つのかっ!?」

 にらみ合う二人を見た司会者がさらなる煽りを入れて会場を盛り上げる。

 だが康生にそれに耳を傾けることはせずに目の前の男――ザグを見据えてひたすらにその時を待つ。

「さぁそれではいよいよ決勝戦を始めます!それではコングっ!」

 司会者が言い終わると、会場全体に響くようなコングが鳴り響く。

 決勝戦ではそれが合図で試合が開始される。

 そうしてコングが鳴り響いた今、決勝戦の火蓋はきっておとされた。

「はっ!」

 まず先に動いたのはザグだ。

 ザグは体中、いたるところを鍛え上げておりその肉体はとてつもないものになっていた。

 にも関わらず、動くスピードはとにかく速く、スピードとパワーの両方を兼ね備えている。

 しかしそのスピードでは康生に遠く及ぶことはなかった、

「ちっ」

 思い切り踏み込みを入れて飛び込んできたザグを康生は簡単に避けてしまう。

 それを見たザグは軽く舌打ちをしながら、再度攻撃を仕掛ける。

「いっけっ!」

 次の瞬間、大きな衝撃波が発生したかと思えば康生は何かに押しつぶされてその体を吹き飛ばしていた。

 康生はザグの攻撃を避けたはず。なのに現在はその攻撃によって吹き飛ばされていた。

「ぐっ」

 康生は息を吐き出しながらもすぐに体勢を整える。

 瞬時に反応が出来るのは、その不可解な力は今までの試合でしっかりと見てきたからだ。

 だからこそ、康生はその力の正体をすでに見破っていた。

「やっぱり風の魔法か」

「おっ、やっぱり気づいていたかぁ」

 すぐに体勢を整えた康生を見て、ザグは不敵な笑みを浮かべて答えた。

 かと思えばザグは話す時間すら惜しいというような感じで、再び康生に向かって攻撃を仕掛けてきたのだった。

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