第330話 話

『勝者はエクス選手!!』

 瞬間、会場中に響くように大きな声が響く。

 そしてそれを聞いた観客達は大きな歓声をあげる。

 そんな歓声に包まれて康生はくらくらとした目眩の中、頑張って体を立たせていた。

 康生の前にはシロが横たわっており、それが康生の勝利の証であった。

 歓声があがる中、康生は薄れゆく意識の中考える。

(早く……あいつのところに……行かないと……)

 試合が終わった今、現在メルンが一人で調査に行っているあの異世界人について康生は考える。

 今回の失踪事件の何かを知っているそいつの元に康生はすぐに行かなければいけない。

 しかし足を踏みだそうにも意識が朦朧としているので、どこに行けばいいかすら分かっていない。

 おまけに目眩のせいでまっすぐ歩こうにも歩けずにいた。

 それほど康生はこの試合で大きく消耗したのだ。

「すぐに治療をっ!」

 薄れゆく意識の中、康生の耳元にはリングに駆け寄ってきた、医療グループの声を最後に意識を閉ざしてしまったのだった。




「……ここは?」

 目が覚めると康生はまず白い天井を見た。

 そしてすぐに自分がベッドに横たわっていることを確認する。

 一体何があったのかと、意識を失う前のことを思いだそうとする。

「……っ!」

 そしてすぐに自分が試合で勝ったことを思い出す。

 同時にメルンが一人であの異世界人について調査しにいったことを思いだし、すぐにベッドから起きあがろうとする。

「くっ……」

 が体が思うように動かず、特にお腹から痛みが走り、すぐに力が入らない。

「あっ!康生さん!もう起きたんですかっ!」

 すると、起きあがろうとしたことに気づいたのか、近くから声が聞こえた。

 顔を向けると、ベッドの傍らにはメルンが心配そうに顔を向けているのに気づく。

「メルン。あの件はどうなったんだ?」

 メルンの無事を確認出来たことに一安心しながら、康生はすぐに例の件について訪ねる。

「あぁ、あの件については何も心配しないで下さい。そんなことより!今は自分の体のことを考えて下さい!康生さんの体は危ない目にあっていたんですよ!」

 だがすぐにメルンに起こられてしまい、起こそうとする体を強制的に寝かされてしまう。

 そんな身動きがとれない状態のまま、メルンはさらに続ける。

「試合には勝ちましたけど、康生さんはあの時、主に火傷の損傷で体はとうの限界だったんですよ?なのにあんなにも激しく動いたので、本当に大変なんでしたから……!」

 とそれからしばらくの間、どれだけ心配したのかメルンが語り始めた。

 康生はそれを心配を掛けたと思いながらも、しばらくの間その話に付き合ったのだった。

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