第329話 リング

「はぁっ!!」

「っ!!」

 康生とシロは、お互い一歩も譲らぬ攻防を繰り返す。

 攻撃を入れれば、相手からもまた同じように攻撃が返ってくる。そんなギリギリの戦いだった。

 決着がどうなるのか、この試合を見ている者達は皆固唾を飲みながら見守る。

 そしてそんな長く続くように思われた二人の攻防はわずかな変化を見せる。

「っ……!」

 康生の攻撃を食らったシロは、わずかながらに足をよろけさせる。

 当然康生はそんな隙を見逃すわけがなく、すぐさま攻撃を入れる。

 だがシロは咄嗟に青い炎を出してそれに応戦しようとする。

 しかし青い炎が出たことで、康生は攻撃を中止すると思いきや、康生はその攻撃をやめることはしなかった。

 まっすぐ繰り出した拳は青い炎を出したシロの手のひらめがけて放たれる。

 瞬間、ジューという肉が焼けるような音がわずかに聞こえる。

「がはっ!」

 かと思えばすぐにシロが血を吐き出しながら吹き飛ばされる。

「ぐっ……!」

 そして康生はといえば、青い炎をモロに食らってしまい、グローブは焼け焦げていた。

 いくらグローブをしていても、青い炎は一瞬のうちに全て燃やし尽くしてしまう。

 だからこそグローブとともに、康生の拳も燃えてしまったのだ。

 しかし康生はそんなことを気にする様子もなく、使えなくなったグローブを捨ててシロの元へと走る。

「うぉーっ!」

 大きな雄叫びをあげて、立ち上がろうとするシロめがけてさらなる拳を振り上げる。

 グローブがなくなってしまった以上、拳の威力は半減するが、それでも風の力や魔法の力が加わった康生の攻撃は相当な威力を誇る。

「ぐっ!」

 すかさずシロは対処しようと体を無理矢理に起こそうとする。

 だが、

「うっ……!」

 シロは足から崩れてしまう。

 よく見るとシロの足には一本の小さな針のようなものが刺さっていた。

「くっ……!」

 どうやら康生がシロに攻撃をする際、痺れ薬のようなものを塗った針を足に刺しておいていたようだ。

 その効果もあり、康生の攻撃に対処しようとしていたシロは、大きな隙を見せてしまう。

「いっけぇー!」

 そして康生はそれを決して見逃さない。

 大きく振りかぶった拳を、ねらい違わず一直線に落とす。

 次の瞬間。康生の拳が降ろされた後、リングの上には立っているのがやっとのような康生と、リングに寝そべり動かなくなってしまったシロがいたのだった。

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