第325話 全方位
空中に浮かぶ康生を見てシロは、じっと睨みながらも口にする。
「空に逃げてもだめ。私の炎はどこまでも追いかける」
そういうとリングを張っていた青い炎が一斉に高く燃え上がる。
燃え上がると同時に、その青い炎達は康生めがけて迫ってくる。
「やっぱりそういうことも出来るのかっ」
空にいる康生をめがけて、青い炎達はあらゆる角度から一斉に迫ってくる。
「だから言った。私の炎からは逃げられない」
シロは一切表情を崩さずに、これほどの炎を一度に全て操ってみせる。
確か魔法は長い時間使えば使うほど、魔力の消費量が増大すると言っていた。
だからこそここまで青い炎を出し続けているシロに対して康生は、その魔力量や精神力に畏怖の念を抱いている。
だからこそ長期戦に持ち込めばと、軽く考えていた康生だったが、こうも一斉に青い炎が向かってくるのでは敵の魔力が尽きるまで逃げきれる自信がなかった。
「ほっ」
しかしそうは言うものの、現状康生は青い炎の猛攻撃をぎりぎりのところで回避し続けていた。
だがそれだけの回避力は風の力や、魔力をただ消費し続けるだけのものだった。
しかし現在ではメルン協力の元、最小限の力だけで空中を浮遊し移動出来る魔道具を開発していた。
だからこそ現状はここまで回避をすることが出来ている。
しかしそれもいつまで続くか分からない。
シロの魔力が尽きるのを待つという、不確定要素を信じて戦うことは康生には出来なかった。
だからこそ、
「こっちも攻撃に移らせてもらうぞっ」
青い炎を回避しながらも、康生は一気に加速して地上へと向かう。
「ばかなこと。私に近づけばそれだけ青い炎がそれを拒む」
康生が地上へ降りてくるのを見たシロは、その行動に対して一笑する。
魔法の発動者の近くに行けばいくほど、魔法を操る力は完璧になる。
それは康生でも知っているものだった。
でも、だからこそ康生はシロへと向かって降下したのだ。
「悪いが一瞬で決めさせてもらうぞっ!」
「何をたくらんでいるか知らないが、お前は私に殺される運命だ」
康生が降下してくるのをじっと見据えながら、シロは全ての青い炎を使って康生の迎撃に移る。
流石に全方位からこられると回避するのは難しい。
あわや絶対絶命かと思われた。
しかし、それはただ回避するだけしかなかったらの場合だ。
「はっ!」
康生は全方位から迫ってくる青い炎に対して全身に力を込めて声をあげる。
その瞬間、康生に迫っていた青い炎がわずかながらに動きを止めたのだった。
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